■木崎さと子(作家)
初めてお会いしたのは一九六七年の春。パリであった。色白の細面に切れ長の眼(め)、束ね上げた髪に黄八丈ふうの和服姿だった。
その前年、フランス住まいの私が一時帰国したときに、友人がパリに行くから紹介したい、と知人に言われ、約束の場で待ったのだが、たか子さんは現れなかった。当時鎌倉に住んで高名な作家となられた夫の和巳氏が京大に就職されるにつき、たか子さん自身の故郷でもある京都への同行を拒む葛藤から一時的な記憶喪失に陥った、と後で説明された。それもあって非常な思いのパリだったらしく、なにか殺気めいた烈(はげ)しささえ伝わってきた。