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(文芸時評)世界文学

写真:画・寺門孝之「帝国のための糸繰り」拡大画・寺門孝之「帝国のための糸繰り」

■松浦寿輝(作家・詩人)

 三十代はじめの米国人の女性作家が、なぜか不意に明治時代の日本に興味を惹(ひ)かれ、彼女の実生活とは縁もゆかりもない「黒船」やら「文明開化」やら「西南戦争」やらについてせっせと調べはじめる。その過程で『女工哀史』(細井和喜蔵著、大正十四年)に活写されているような、往時の紡績工場に働く女性たちの悲惨な境遇について知る機会もあったかもしれない。しかしそこまでなら単に、知的関心の赴くまま外国の歴史について知識を深めたというだけのことにすぎない。

 その女性作家――カレン・ラッセルは、「帝国日本」の発展と繁栄の礎となった社会の底辺の女性たちの運命を手掛かりに、そこから奇態な想像力を羽ばたかせ、一篇(いっぺん)の「超現実的」な怪異譚(たん)を創り上げた。「帝国のための糸繰り」に展開されるのは、身売りして「無縁工場」と称する製糸工場に連れてこられた若い娘たちが、蚕に似た怪奇な生き物へと徐々に変身し、指先から絹糸を繰り出しつづけるという綺想(きそう)である。結末で逆転が起こり、身体を搾取されていた女性の側が主体性を取り戻し、「帝国」への反攻にうって出るという趣向が冴(さ)えている。

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