■アメリカ国民画家の楽屋裏
エドワード・ホッパー(1882〜1967)は、20世紀アメリカの国民画家的な存在だ。19世紀のリアリズムを継承しつつ、印象派から学んだ造形のモダンさをもち、アメリカ的な現代生活の寂寥(せきりょう)を都市や郊外の風景に見いだしていく。いわゆるアメリカンシーンの作家で、堅実なデッサン力を持つが、習作を重ねて画面を構築していく。その制作プロセスをテーマとした展覧会がホイットニー美術館で開催されている(10月6日まで)。
200点余の素描(ドローイング)を展観し、アメリカ人なら誰でも知っている油彩画の創造の楽屋裏を探索する。ホッパーの素描は、10代後期から観察力が高く、筆もしっかりしている。だが、それだけではない。「旅人宿」(45年)ではテーマとなる建物の現場に何度も足を運んでアングルを決め、「夜のオフィス」(40年)では鳥瞰(ちょうかん)的な構図をとるなど、ある種シネマチックな視覚が面白い。