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(2012年7月14日、「フロントランナー」)
■あんのひであき(52歳)
6歳の時、自宅の白黒テレビで見た「ウルトラマン」。ビル街に銀色の巨人が立ちはだかる斬新な映像に、衝撃を受けた。
「ウルトラマンがなかったら今の僕はいない」
「呪縛みたいなもの」
大学時代、すでに才能は花開き始めていた。自分自身が素顔のままウルトラマンを演じ怪獣と戦うという奇抜な自主映画を生み出し、玄人はだしの特撮映像でマニアをうならせた。1990年代、社会現象となった代表作「新世紀エヴァンゲリオン」も、「都市を襲う正体不明の敵を巨人が迎え撃つ」という基本設定は、ウルトラマンと重なる。
子どもの頃に熱中した特撮・アニメ番組が今も表現の核であり続けている。「オタクの中のオタク」だ。
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自ら企画し、東京都江東区の東京都現代美術館で開催中のイベント「特撮博物館」(10月8日まで)は、お世話になってきた特撮作品への恩返しだ。特撮用のミニチュアがアートとして展示され、新作映画も上映される。「特撮をつくった人々は次々と亡くなり、ミニチュアもゴミ扱いされている。保存に動かないと永久に失われる」と焦る。
一方では、近年進めてきた「エヴァンゲリオン」の新劇場版・全4部作の第3部「Q」の製作が大詰めだ。新作の情報は極秘扱い。先日、その公開日「11月17日」が明らかになっただけで、待ち焦がれたファンを熱狂させた。
宮崎駿監督のアニメが富士山の裾野のように幅広いファンを持つのに比べ、「エヴァ」のファン層は限られる。だが一人ひとりの愛着、没入の度合いは、東京スカイツリーのように他のアニメを圧する。スマホ、フィギュアなど関連商品は1万点以上。いま、これほど吸引力を持つ作品を創造できる人はアニメ以外でもそう見あたらない。
かつて「エヴァ」を「自分の内面をそのままドラマに投影したノンフィクション」と話した。スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーは「迷える子羊が自分探しをする物語。夏目漱石の『三四郎』を連想させる」と話す。
97年公開の完結作では、主人公の少年シンジが、「もういやだ、死にたい」「みんな死んじゃえ」とつぶやき続け、ヒーローらしい行動は一切なかった。「他人との適切な距離が測れず、虚構の世界へ逃避している」自分自身を含むオタクたちへの、苦い批判が込められていた。