エリカは連れ去りにあった
算数の授業中に教室へ入ってきた男に
ユウキは切られた
コウタロウは不良たちに渡すお金がなくなって
もっと大切なものを差し出した
それでもぼくは休まずに塾へ通い
帰ってきてお腹いっぱいネギトロ丼を食べる
母さんは元気だし
父さんはリストラもされてない
パジャマに着がえて灯りを消すと
夜の河のまっくろい水面が
音もなく盛りあがる
あの底に本当の悪者が隠れてるのさあ
部屋の隅に浮かんでコウタロウが教えてくれる
人間は使いっぱしりでしかないんだよね
頭に包帯を巻いたユウキが云う
でも悪は善がなくては生きてゆけない
闇のなかでこそわたしたちの瞳は輝きをます
流れ星のようなエリカの声に導かれて
布団の筏が岸を離れた
悪者の吐く息にぼくの鼓動が響いている