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朝日いつかは名人会ガイド

朝日いつかは名人会とは
 東京・築地の浜離宮朝日ホール(小ホール)で06年4月から開催の「朝日いつかは名人会」は、落語界の未来を背負って立つ二つ目の若手を応援する会。年4回開催の予定で、毎回、若手真打ち1人がゲストになり、前座1人と二つ目2人を紹介します。落語をお楽しみいただくほか、彼らが本音を語り合うトークショーもあります。

演目紹介

第2回(06年7月5日)の演目

2006年07月21日

 7月5日夜7時から浜離宮ホールで第2回「朝日いつかは名人会」が行われた。今回から“いつかは=5日は”が開催日。4、7、10月と3カ月間隔で5日は「いつかは名人会」の日ということ(ただし、1月の5日はいわゆる松之内、海外旅行や帰省のお客様も多いでしょうから、1週間ないし10日ほど日程をうしろにするつもり。とりあえず来年07年1月の第4回は12日の予定です)。

 今回、第2回のナビゲーター真打は、第1回に続いて柳家喬太郎さん。主役の二ツ目は三遊亭好二郎さんと三遊亭遊馬さん。前座は初の女流登板で柳亭こみちさん。

 好二郎さんは三遊亭好楽門下(円楽一門会所属)、遊馬さんは三遊亭小遊三門下(落語芸術協会所属)、こみちさんは柳亭燕路門下、喬太郎さんと同じ落語協会の所属。

 演目は出演順にこみち「やかん」、好二郎「だくだく」、遊馬「井戸の茶碗」、そして喬太郎は自作「すみれ荘201号」。むろん、喬太郎さん以外の演目は古典落語です。

 こみちさんはメリハリのあるしっかりした口調が身についていて、なるほど秋の二つ目昇進もうなずける高座ぶり。Q&Aスタイルの落語の基本パターンの典型噺「やかん」を見事にこなしました。聞き役を愚者呼ばわりするにしてはデタラメ、こじつけだらけの迷論を吐き通す知ったかぶり男が「どびんは土で出来た瓶、鉄瓶(てつびん)は鉄で出来た瓶……」まではよかったが、じゃ、やかんは?と問われて壮大な戦国スペクタクルをでっち上げるこの噺、ここだけの話ですけどね、一流の師匠たちでも(基本的なフォームがアクの強さゆえに崩れてしまって)、うまくやれない場合が多いんですよ。

 「だくだく」は絵に描かれた家財を目の悪い泥棒が本物とまちがえて侵入し、家人と想像の世界で捕物劇を演じ合う、ちょっとバーチャル性のあるナンセンス落語。

 槍で突いたつもり、血がだくだくと出たつもり……なんて、一見は古めかしい噺ですが、“気で気を養う”という表現があるように、想像の世界に遊べるのは人間だけの特権。その使い方がヘタな人が増えたのか、妙な犯罪が増加した近頃は、やはり病める時代なのか。

 ふだんはキッチリした形で演じることが多い好二郎さんですが、大いにハシャイで、精彩あふれる「だくだく」でした。この噺、演者が気を入れてやらないと客が乗り損なうことが多いんです。近年、こんなにいい「だくだく」は珍しい。

 「井戸の茶碗」は講談「細川茶碗屋敷」を落語化した噺。かの五代目古今亭志ん生以後、とてもよく演じられるようになりました。

 きまじめで筋を通したい人物ばかりが揃うと、世の中かえってギクシャクする、というストーリー。貧しい浪人の持っていた仏像の中に小判で50両が秘められ、また銘器の茶碗を日常使っていたのですが、どちらも手放してからそれがわかる。

 いまの時代にも通じる「モラル」を武士と町人の交流を通じて描いた大作ですが、遊馬さんは正面から取り組みました。こういうしっかりした噺はギャグなんかで小細工しないことが肝心。銘器の噺を語った遊馬さんこそが“大器”だ――というわけで、結構でした。

 仲入り後の喬太郎、遊馬、好二郎によるトークは、所属団体のちがう3人がそれぞれの環境を語り合いながら、自分の師匠のそのまた師匠「大師匠(おおししょう)」との関係などについて、とっておきの隠れたエピソードをまじえて楽しく聞かせました。喬太郎さんの大師匠、五代目柳家小さんは2002年に亡くなりましたが、好二郎さんの大師匠・三遊亭円楽、遊馬さんの大師匠、三遊亭遊三は健在です。

 喬太郎さんは自作の中でもハメを外した“音頭”の飛び道具が入る“名作”で40分ほど大熱演、客席をワンワンわかせてお開きになりました。第1回とは対照的なネタをぶつけてくるところ、さすがにしたたかな巧者ぶりでした。

京須 偕充(きょうす・ともみつ) 落語プロデューサー
 1942年、東京生まれ。ソニー・ミュージック(旧CBS・ソニー)のプロデューサーとして、六代目三遊亭圓生の『圓生百席』や古今亭志ん朝の作品など、数多くの落語レコード、CDの制作を手がけてきた。
 有楽町で開かれている『朝日名人会』に加え、06年4月に浜離宮朝日ホールを舞台に始まる『朝日いつかは名人会』をプロデュースする。
 『落語博物誌』(弘文出版)、『落語名人会 夢の勢揃い』(文春新書)、『古典落語CDの名盤』(光文社新書)など、落語に関する著作も多い。
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