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朝日いつかは名人会ガイド

文・京須偕充

演目紹介
第7回(07年10月5日)の演目

2007年10月15日

 7回目を迎えた今回も超満員。ナビゲータ役は柳家喬太郎で、そのカリスマティックな人気のほどがうかがえました。

 7回のうち4回が喬太郎ナビゲート。過半数の回数です。高座からもその旨を言っていましたが、過半数を取ったの取られたので泣いたり笑ったりする国会と違い、誰もが結果にワンダフルの過半数。

 前座は三遊亭歌武蔵門下の歌ぶとで「道具屋」。暖かい笑いと拍手に包まれて戻ってくるなり「いいお客さんですね」。

 朝日いつかは名人会のお客はいいお客、と毎回の出演者が異口同音に言います。お客様方、楽屋で落語家がいいお客という会ってそうザラにゃないんですよ。常連の方はますますご精勤を、まだ来たことのない方はぜひ「いい客」の一員体験のためにお出ましのほどを。

 瀧川鯉橋と五街道弥助が今回の主役の有望二つ目。落語芸術協会と落語協会のそれぞれ成長株で、弥助が「のぼり」時代に朝日名人会(有楽町朝日ホール)でしばらく前座をつとめたことは事前にご紹介しました。

 鯉橋は師の鯉昇に、弥助も師の雲助にDNAの共有を感じさせる語り口。

 でもそれはいいことで、しっかり基本が身についている証拠と喬太郎はコメントし、だけど「そんなに師匠が好きかよ」と付け加えました。

 鯉橋は『時そば』をアクションも交えて陽気に演じました。古い噺ですが、随所に現代風ギャグを入れる師匠の演出を若々しく継承して、溌剌(はつらつ)とした気持ちの良い高座でした。

 弥助は師匠ゆずりで、でも近年やり手の少ない『星野屋』をじっくり演じました。怪談噺めいた部分もあるちょっと特異な噺で地力を発揮しました。

 「とっておきトーク」は二人のまじめな性格や方向性がよく出て、先輩喬太郎との話し合いはとても内容の濃いものになりました。まだ真打昇進には少し間のある二人ですが、名前のことも含めて、しっかりしたビジョンをもっていることがうかがえました。

 二人の自然なトークぶりを評して喬太郎が「フラがあります。僕はフラのないタイプだからとてもうらやましい。フラは天性の要素で稽古(けいこ)では身につかないから、その点では一生かないません」と言ったのが印象的でした。

 こんなことをサラッと言えるのはまた別の意味で大したものだと私は思います。いい年こいて、ここまで言えない、気が付いてもいない、だけどいっぱし師匠風吹かし――、てのがゴロゴロいるんですから。

 その柳家喬太郎は『錦木検校(にしきぎけんぎょう)』。喬太郎古典ネタの中では練り上がり、定評のある人情噺の一席。

 この噺は明治後期の名人・四代目橘家圓喬の名演伝説で知られる『三味線栗毛』です。いい噺のわりにサゲが平凡でしたが、喬太郎版はサゲを廃止し、悲劇の、しかし感動的な結末にしました。名馬と三味線の撥(ばち)の要素も薄くなるので題名も変えたというわけです。じっくり聞かせてくれました。

 次回第8回は08年1月15日(火)。ナビゲーター・柳家花緑、二つ目は二度目の三遊亭きん歌と柳家花ん謝です。

プロフィール

京須 偕充(きょうす・ともみつ)
落語プロデューサー
1942年、東京生まれ。ソニー・ミュージック(旧CBS・ソニー)のプロデューサーとして、六代目三遊亭圓生の『圓生百席』や古今亭志ん朝の作品など、数多くの落語レコード、CDの制作を手がけてきた。
有楽町で開かれている『朝日名人会』に加え、06年4月に浜離宮朝日ホールを舞台に始まる『朝日いつかは名人会』をプロデュースする。
『落語博物誌』(弘文出版)、『落語名人会 夢の勢揃い』(文春新書)、『古典落語CDの名盤』(光文社新書)など、落語に関する著作も多い。

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