現在位置:asahi.com>文化・芸能>コラム>ラクゴロク> 記事 聞き手:西秀一郎 構成:小松照昌 「ほめられて伸びるタイプ」 風間杜夫2007年05月26日 お芝居と落語。いまやこのふたつをすっかり両立させてしまった風間杜夫さん。舞台にテレビに映画にと忙しい本業の合間を縫って、落語のレパートリーを増やし、昨年あがった高座はなんと43本! とても副業とは思えません。本職の噺家(はなしか)さんがうらやむほどの風間さんにお話を伺おうと、明治座5月公演「うそつき弥次郎」(作・演出=水谷龍二)の楽屋を訪ねました。
(風間杜夫さん のプロフィール) ――落語を始めたきっかけを教えていただけますか? いまから10年くらい前に「すててこてこてこ」というお芝居をやりまして、これは、幕末から明治に実在した三遊亭圓朝という名人とその弟子の「すててこの圓遊」っていう人のお話で、僕はその圓遊の役をやりました。その圓遊が劇中で「野ざらし」を演じる場面があったんで、その際に林家正雀師匠に指導していただいたのがきっかけです。そもそも、僕は子供のころから落語が好きで、いつか噺を一つでも覚えて、噺家さんのまね事でもいいから人前でやってみたいなぁと思っていましたから、この機会に「野ざらし」を全部覚えまして。 そんなことをしてたら関西で鶴瓶師匠が噺家さん以外に落語をやらせるっていうテレビ番組がありまして、デーブ・スペクターさんとかウッチャンナンチャンの南原さんとか、それから阪急の福本選手とか、たけし軍団の松尾伴内さんとか、いろんな方が落語を演じる番組だったんですけど、僕も出演させていただいて、鶴瓶師匠にずいぶんほめられましてね。 そしたら、すぐ翌年ぐらいに今度は立川談春師匠から「僕の独演会で一席やりませんか?」と。談春師匠の前座という事で。「湯屋番」っていう滑稽噺をやったんですが、これがまあ、ことのほか評判が良くて(笑)。で、ほめられたら気持ちよくて(笑)。じゃあもっとやってやろうと。 そのうちに江戸文字で有名な立川文志師匠に誘われまして、「文志とその仲間」という会について年に4〜5回ですかね、いろんな所をまわりまして……それで修業を積んできたというか。 まあ年に数える程しか人前で落語ができないんでね、せっかく覚えたのに、もったいないので、呼ばれればどこでも行きたいっていう気持ちでいたら、昨年43ステージに呼ばれまして(笑)。それくらいになっちゃったんです。 ――レパートリーはどのくらいあるのですか? 10くらいでしょうか。 ――やっぱり滑稽噺が多いですか? そうですね。まだ人情噺とかそういうのは手を付けてないんで、いずれ「芝浜」とかやってみたいなぁと思うんですけどね。 ――風間さんの好きな噺家さんを教えてください。 子供の頃、ラジオやテレビで親しんだ噺家さんっていうのが、歌奴さん(いまの三遊亭円歌)や、円鏡さん(いまの橘家円蔵)ですね。ただ、今も続けてCDで聴いているのは志ん生師匠と志ん朝師匠です。 ――プロの噺家さんのように弟子入りしているわけでもない風間さんですが、どのようにしてネタを覚えるのですか? 僕の場合はまずCDをテープに移し換えまして、1行ずつ止めながら文字におこしていくわけです。でも志ん生師匠は何言ってんのかわかんないとこいっぱいあるんですよ(笑)。そこを自分の言葉で埋めていかなきゃいけない。まあ今は本も出ていますし、DVDもあるからだいぶ楽になったんですけど……。最初は耳で覚えて、次に書いて覚えて、最後は自分で吹き込んで覚えて。 ただねぇ、やっぱり所作は分からない所があるんですよね。それで、談春師匠の前座をやらせていただいたときは、お宅に伺って一対一で聞いていただきましたし、花緑師匠と二人会をやらせていただいたときには、良い機会だからっていうことで基本的なルールを全部教わりました。上下(かみしも)の振り分け方や、外から帰ってきたり、部屋に入る時はこういう風に入ってくるんだとか、偉い人は座り直してかみさんに話すとか、そういうような事は教わりましたね。 ――風間さんの代表作であるひとり芝居3部作。ひとり芝居と落語っていうのは似てる部分があるように思えるんですけれども。 うーん、落語は座ったままですしね、それこそ上下(かみしも)に振り分けて相手役も瞬時に演じて、時には三人四人も一人で演じ分けるわけですけど、ひとり芝居は一人の人物しか演じていませんので。で、周りにいっぱい出てくるんですね。僕のリアクションとか僕のセリフで、みんなどういう事が語られていて、どんな事件が起きてるのかってことをお客様が想像するわけです。そうゆうお客様の想像をかき立てるという意味においては、落語も一人芝居も一緒なんですけど、やっぱり演劇ですからね、動きはあるし、音楽は入るし、照明は変わるし、セットも変わるしっていうことで、やっぱり一人でいながら総合芸術みたいな所はありますよ。でも落語ってのは全く一人の語りの芸ですから、まあやっぱり演劇とは違いますね。 ――今年も大銀座落語祭に出られるとお聞きしました。今回は何をおやりになるんですか? そうですねぇ、まだ考えてないんですけどねぇ。こないだ桂文楽師匠の「夢の酒」ってのを人に勧められましてね。それを覚えてこの春に2度ばかり人前でやったんですけど、今まで志ん生、志ん朝っていう両御大をやってたんですけどね、文楽って人もなかなかいいなぁ、文楽師匠の噺をできたらなぁと思っています ――ファンの方は楽しみにしていると思います。ところで、落語をひと前でおやりになるのは緊張しますか? えぇ、初めはずいぶん緊張しましたねぇ、役者ですから客席が明るいともうどうにもねぇ処置に困っちゃうんです。お客さんと目があったりすると。ですから最初の頃は客電を全部落としてもらってたんですよ。ところが、プロの噺家さんって、お客さんの表情見ながらテンション上げたり、なにくそと思ったりするらしいんですよ。僕も最近ねぇ、お客の顔をじっと見ながらできるようになってねぇ、ずいぶんすれっからしになってきたなぁ(笑)。やっぱり僕「風間杜夫」が落語をやるって、ハナからそれを分かった上で来てくれるお客さんですから、その辺はラクっちゃラクですよね。緊張はしますけどね。思ったより良いじゃないのって所で大オッケーですからね。そんなにうまくなくてもいいっていう(笑)。その辺の逃げ道があるんで、ずるいっちゃずるいんですけどねぇ。 ――以前このコーナーでお話をうかがった高田文夫さんや南原清隆さんなど落語をやる方が増えましたが、こういった方々だけの落語会はどうですか? そうですねぇ。まあ、でもプロの噺家さんに交じってちょこちょこっとやらせてもらうほうが僕は居心地が良いです(笑)。そういうのってライバル意識が出ちゃうじゃないですか(笑)。僕だってライバル意識大ですからね(笑)。「勉強させていただきます」って気持ちでやってる分には良いけど、例えば柄本明さんの落語とかね、あるいは角野卓造さんとか聞きたいと思いますよ。でも一緒にやろうとは思わない(笑)。変にライバル意識が、負けたくねぇって(笑)。プレッシャーに弱いから(笑)。 ――さて、今回のお芝居も落語に関係があるお話だとか。 いまやっている「うそつき弥次郎」は、「弥次郎」「宿屋の富」「宿屋の仇討ち」三つが練り込まれてます。よかったら是非観てください。空中落語ってねぇ、プロの噺家さんだったらばかばかしくて誰もやらない、空中で落語をやるっていうことやってますんで(笑)。 プロフィール
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