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緒方明監督、5年ぶり新作 「いつか読書する日」

2005年07月01日

写真

「今回は思いがテーマだったから、次作はアクションを」と緒方明監督=福岡市で

 緒方明監督(45)の新作映画「いつか読書する日」が公開される。00年ベルリン映画祭新人賞の「独立少年合唱団」以来、5年ぶりだ。10代の思いを50の坂まで包み隠してきた男女の物語。前作は中学生や若手を起用して青春の痛みを活写したが、今回はベテランを相手に「演出とは何か」を考え考え撮ったと言う。

 ひとり暮らしで50歳の美奈子(田中裕子)は、昼にスーパーでレジを打ち、早朝には坂の町で牛乳を配っている。配達先には、高校時代の恋人だった高梨(岸部一徳)の家もある。高梨の妻の容子(仁科亜季子)は余命わずかで寝たきりの生活だが、ある日、夫と美奈子の縁を知って――。

 監督は「人の思い」を撮ろうとしたと言う。「でも思いは映らない。じゃ、どうするか。禁欲的なまでの思いを映すには、表情を消すことだ。しぐさ、動き、たたずまいに人の気分を出そうと決めました」

 対話が下手な分、相手の腹を読む。自分は社会の中心でなく、一員だと自覚して自分を律する。今や古風な日本人を思い描いた。

 プロと見込んだ俳優たちは狙いに応えてくれたという。先の3人に加え、美奈子を見守る作家・敏子を渡辺美佐子が演じている。

 「みんな、すぐ理解して、しぐさのアイデアが次々出る。時々気持ちが入って、ちょっと顔をしかめると、ぼくが『その顔はダメです』と表情を剥(は)ぎとる。そんな作業でした」

 撮影地の長崎は斜面が多い。牛乳配達する田中は坂を何度も上がり下りした。映像は、ビンを抱えて家々を巡る姿を丹念に追う。かと思うと遠景で、寝静まる町を自転車の灯火だけが動くシーンを見せる。

 「毎日午前4時ごろ現場入りして、撮れても1、2カット。朝は光がすぐ変わっちゃいますから。現場には蛍光灯300本を運びました。朝の光の中で最も美しいのを選んで街灯を付け替えた。カメラの笠松則通の計算です。市の許可を取り、徹夜で替えて、撮影後は元に戻しました」

 「いつか読書する日」の「主語」は、壁一面に本をため込んだ美奈子だ。だが美奈子は今日もクタクタで、読めずに寝てしまう。

 「いつか、いつかと人は生きる。年をとれば変わるかと思ったら、ぼくは今も『いつかこんな映画が撮りたい』なんて言っている。でも、いつか、があれば人は生きられる。それがぼくと(原作・脚本の)青木研次の問題提起、かな」

     ◇

 撮影した長崎で先行上映中。東京・ユーロスペースと福岡・シネテリエ天神で2日公開。順次各地で。


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