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ほの暗さが個性的な広場やストリートをつくりだす「ヴィーナスフォート」。ラスベガスの本家と同じデザイン事務所の設計で99年夏に登場した=江東区青海で |
本来はオフィスビルが並ぶはずだった臨海副都心。「ゆりかもめ」を青海駅で降りてデッキを進むと「ヴィーナスフォート」だ。フレスコ画を思わせるだまし絵の青空の下に、歴史のヨーロッパを模した商店街が続く。空の色は短時間でブルーから夕焼けの赤に変化する。クーカイ、ゴルチエなどのブランドショップ、小粋さを演出したレストラン。そこは全天候の人工ファッションストリートだ。
空間はとにかく暗め。ブティックの店内や路上に並ぶ屋台形式のグッズショップの照明がまぶしく思えるほどだ。現代の材料でそれらしく仕立てた石畳の街路も、女性像の躍る噴水の広場も明かりは絞られ、茶色系統のくすんだ色彩が、場を支配している。そこを歩く若い女性の2、3人連れもカップルも家族連れも、みんなが影になって静かに歩を進める。抑制された照明が小声で話させ、シルエットを一段と美しく見せる効用をもたらしている。
それは「先輩」とは異なる雰囲気だ。比較対象は米ラスベガスの「フォーラムショップス」。最高格とされるホテル「シーザースパレス」併設のショッピングモールで、街並みも、だまし絵の空も、そのままに輸入したのが「ヴィーナスフォート」なのである。
本家を歩くのは、バミューダショーツの巨漢と家族たち。時には歓声もあげながら、ブランドショップを冷やかしたり、無国籍料理のレストランで気勢をあげたり。夏には気温がセ氏40度を超える、砂漠に囲まれたラスベガス。その厳しい気候が全天候モールの生みの親であり、身なりはかまっていられない。
その空間を輸入して、東京はファッションストリートとする。ラスベガスの観光客とは比較にならぬほど、姿形を意識した男女が、さっき買ったばかりのブランドのロゴ入り紙袋を手に歩いている。では、こちらのほうが成熟した都市の姿なのか。
「ヴィーナスフォート」に教室形式のカジノ広場はあっても、本物のカジノは存在しない。合法化反対は根強いが、カジノを大人の娯楽の極点と見なせば、永遠の未成熟都市とされる東京の素顔がのぞく。
一方、ラスベガスを支えるのは、世界からの観光客を楽しませる高度な歓迎システム。カジノが築き上げたものだが、それがあればこそギャンブル都市は家族向けリゾートにイメージ転換できた。「フォーラムショップス」は先導役であり、だまし絵商店街はいたるところで増殖中だ。
いきさつはすっ飛ばして、流行を採り入れて来た東京は、今回も流れに乗った。ファッションも都市も、その習性は変わりそうもない。