
三屋(みつや)家の隠居、清左衛門は52歳。現役時代は、家禄120石から出世して320石という上士並みの禄高を得て、亡くなった先代藩主の用人(ようにん)を勤めていた。最近隠居が許され、長男又四郎への家督相続を済ませた。釣りや鳥刺しをする悠々自適の隠居生活を夢見ていた清左衛門だが、実際には寂寥感(せきりょうかん)に襲われる。空白を新しい習慣で埋めようと、清左衛門は日記をつけ始めた。そんな清左衛門を嫁の里江は何かと気遣い、親友の町奉行・佐伯熊太も隠居部屋を訪れては、藩内の厄介事の仲介を清左衛門に頼むようになる。清左衛門は、若い頃に通った道場や私塾に通い、釣りにも精を出して新しい生活になじみ始めた……。