
独創性溢れる秘剣と共に織りなされる17編の剣客短編集。うち8編が『隠し剣孤影抄』、9編が『隠し剣秋風抄』に収録されている。個性豊かな剣とその遣い手たちの心の機微を描いた物語は、悲劇的な結末から、読後に思わず微笑んでしまうようなものまで多彩にそろう。
◆「盲目剣谺返し」(隠し剣秋風抄)
元近習組の三村新之丞は、藩主の毒味役を勤めた際、毒に当たり失明してから1年半が過ぎた。家禄も召し上げられず、嫁の加世や老僕の徳平の世話により、不自由のない生活だが、加世が夫の回復祈願のため、月に一度出向く寺参りのときに、男の影がちらつく。加世に問いただすと、密会の相手は新之丞の元上司である島村藤弥であることが判明した。新之丞が失明したとき、家、そして新之丞を助けるために自らの身体を差し出し、以来脅され続けたという。新之丞は加世に離縁を言い渡し、東軍流木部道場の麒麟児と誉れ高かったころを思い出すかのように、再び剣を手にする。そしてついに島村に果たし合いを申し込む。