
【伝統を学ぶ】


締太鼓の音に耳を傾ける堅田喜三久先生。

『来序』の練習をする受講生たち。

教室にピンと張りつめたような、緊張した空気が漂っている。同時に、どこか華やいだ雰囲気もある。それもそのはずで、この日は「長唄(ながうた)鳴物(なりもの)」の人間国宝、堅田喜三久(かただ・きさく)先生が稽古をつけてくれる日だからだ。
茶室にも使われる畳敷きの教室。受講生たちはそこに小鼓(こつづみ)、締太鼓(しめだいこ)を準備し、正座して待つ。そして、教室に堅田先生が登場するや「じゃ今日は『来序(らいじょ)』からやってみようか」と、すぐに演奏がはじまった。
『来序』は、歌舞伎で狐の変化(へんげ)などの出入りに用いられる囃子(はやし)の一つである。堅田先生も生徒の演奏に合わせて、張扇(はりおうぎ)で小机を叩く。終わると演奏の注意点を指摘し、次の演目に入る。
「ツッテン、テレツク、ツッテンテン」と、口で唄いながら稽古をつける堅田先生の姿は、それだけで絵になり、魅力的である。
堅田先生が朝日カルチャーセンター横浜で歌舞伎囃子を教えはじめて20余年になる。講師陣は堅田先生を筆頭に邦楽囃子の第一線で活躍する演奏家が務め、構え方、打ち方、間の取り方など基本から教える。ただし、堅田先生が教室に来るのは月に1度だけ。本番さながらの稽古で生徒たちの上達ぶりをチェックするというのが堅田先生の役割なのである。
張扇から三味線に持ち替え、次には長唄『五郎(ごろう)』の稽古がはじまる。堅田先生の三味線に合わせての合奏だ。堅田先生から、厳しいが心のこもった助言がある。
「皆、音は合っている。それでも音に色気がない。それじゃロボットだよ」
堅田先生が最も大切にしているのは「演奏の“ノリ”」だ。言葉だけで習得するのは難しく、演奏を通じて体得するほかない囃子の神髄。人間国宝を間近に、その神髄に触れることができるというだけでも貴重な教室といえるはずである。
●歌舞伎囃子
朝日カルチャーセンター横浜
問い合わせ先
堅田喜三久先生の講座「歌舞伎囃子」は、朝日カルチャーセンター横浜(045−453−1122)で受講できます。〒220−0011 横浜市西区高島2−16−1 ルミネ横浜8F
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