現在位置:asahi.com>文化・芸能>コラム>漫画偏愛主義> 記事 肉食獣のテーブルマナー(草間さかえ)2007年08月31日
またボーイズラブ(BL)です、すみません、すみません。謝るくらいなら最初から取り上げるな、という向きもあるかもしれませんが、これは私の偏愛の重要な部分を占めているのです、ご了承ください。 最近がぜん露出が多くなっている草間。先日はユリイカの臨時増刊号「腐女子マンガ大系」(青土社)の表紙も描いていた。ユリイカが男性同性愛をテーマにした少女マンガの特集を組むのも感慨深いが、その表紙に草間を選んでくるとは、さすがと言うしかない。しかも、タイトルに「腐女子」(女オタクの俗称)を掲げ、取り上げているBLはストーリー性が高く評価されている作品のみならず、私でさえあまりにエロくて取り上げるのに腰が引けていた作品まで。評論も洞察が深いものばかりで、私のオタク度もまだまだだと思い知らされたよ、もっと精進しなくては。 さて、話を草間に戻そう。最近活躍する出版社を広げており、今回の「肉食獣…」に続いて、「夢見る星座」がリブレから出版された。どちらも草間らしさが存分にでた短編集なのだが、「肉食獣…」の方の暗さが好みなので、私としてはこちらに軍配が上がる。 双子の兄弟・亮司と聡司は、見かけはそっくりだが性格は正反対。純真な亮司に対し、聡司は密かに恋情を抱いていた。大学の後輩・安藤は聡司のかなわない恋を知り、それまで苦手だった聡司に恋をする。タイトルの「肉食獣」というキーワードは、聡司が攻め(腐女子用語。性交渉における男役のこと)だからではなく、「肉を食べると体臭がきつくなり、近親者であることを亮司がより認識するから」という理由で聡司が肉断ちしていたことからくる。 さりげない言葉の使い方と、肉断ちという設定を生かしたストーリー運びが秀逸だ。草間の作品はどれも現実的なのに少し日常から離れてしまう登場人物たちを描いている。その不思議な感覚は、背景までフリーハンドで描かれた画面と見事にマッチしている。以前までは草間独特の隠微さが前面に押し出された作品が多かったが、各出版社の傾向にあわせているのか、最近はライトな作品も多くなってきた。今回のカバー裏や折り返しの四コマ漫画をみると、コメディータッチも得意なようなので、今後のさらなる発展を期待したい。 私が草間をひいきするもう一つの理由。公式サイトから推察するに、草間はどうも奈良県在住のようで、しかもそこは奈良市や生駒市といった大阪通勤圏ではない場所のようだ。私もかつては奈良に住んでいた。あの奈良の、しかもちょっと不便な場所に住んでいる(らしい)草間。なんだかいとおしい。ぜひ東京に出たりせず、そのままの場所で描き続けてほしい。なぜだろう、日本各地に住んだが、なぜか奈良にだけは愛憎入り混じる思いがする私だ。大阪本社在勤の間に、いつか草間に取材をしてみたかったのだが、当時の担当デスクの却下と私の異動によりかなわぬ夢となった。いつかかなう日まで、活躍しつづけてくれ、草間。 プロフィール
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