現在位置:asahi.com>文化・芸能>コラム>漫画偏愛主義> 記事 羊たちの番人(石原理)2007年11月09日
エロい。石原理が珍しくエロい。描写が激しいわけでも、モロに描いているわけでもないのに、シチュエーションがもうエロいったらない。でもこれはボーイズラブ(BL)なので、ヘテロなエロを期待された方はご容赦を。 石原理といえば、ラブラブ熱愛がお約束のBL界の中でも異質な存在だった。硬質な絵柄と、受け(性交渉における女性的役割)の男性すらも男らしくかっこいいという特徴。そして、毎回主人公たちの「恋愛によらないアイデンティティーの獲得」をメーンに描いていたことは、恋愛至上主義のBL界では本当に珍しい存在だった。石原自身、近著「犬の王」(リブレ出版)のあとがきで「私のほとんどの作品のテーマは『運命を変えようとする力』」と述べている。 それが今回、職務のために対立する男たちの関係を描きながらも、ラストでさらりとラブラブに変換して見せた。驚きだ。そのあっけなさに、石原が石原自身をパロディー化してしまったような印象すらある。そうよ、腐女子(女オタクの俗称)たちは、石原が描くストイックな男たちを「かっこいい」と思いながらも、その反面「こんな硬派な男が恋愛におぼれるところも見てみたい」という欲望を持っていたのよ! 「情熱と抑制が同居してるカンジが好きなんです」と今回のあとがきで書いていたが、これを石原が商業ニーズにあわせたのではなく楽しんで描いたならば、我々腐女子は今後の石原作品にますます期待を募らせてしまうだろう。 表題作の主人公はなんと牧師同士。神に身を捧げた者たちが禁忌の恋に落ちるという設定は、BLならではのファンタジーなので、どうか信心深き方々もどうか目をつむって欲しい。通常ならうそくさくなりそうな設定をリアルっぽく描けるのは石原の力量だろう。16才の時に人を刺した過去を持つ主人公・矢内は、亡き父の後を継いで牧師になった。しかし主の教えに背いてばかりの矢内に、正体を隠して隠して牧師の湯名が現れる。教義に忠実に生きてきた湯名は矢内の自由な生き方にふれて、自らを振り返る。 コメディーっぽく笑わせる要素をちりばめながらも、結局は「生き方を変えていく」のを描くのはやはり石原。彼女は出産育児のためにしばらく仕事を減らしていたようだ。この作品も当初年1回の連載で「ラストまで見られるだろうか」と私は不安になっていたが、ラストが少々強引とはいえ見事に完結させてくれた。出産という体験でこのライトな作品が生まれたのだろうか。新生・石原のさらなる発展を期待したい。 プロフィール
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