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漫画偏愛主義

おとめ妖怪ざくろ(星野リリィ)

2008年02月15日

表紙おとめ妖怪ざくろ 1 (星野 リリィ  幻冬舎コミックス  ¥ 620)  

 かわいらしい絵柄とロマンチックな作風で圧倒的な人気を誇る星野リリィ。とはいえ彼女はボーイズラブ(BL)をメインに描いてきていたので、その人気は限定されていた。その彼女が「青年誌初連載」というのだから、コミックスになるのを待って早速買ってみた。戦う美少女とカッコイイ男性陣。星野の世界観は変わらないまま、確かに男性読者にもウケそうな作品に仕上がっていた。

 妖怪と人間が共存する世界で、悪さをする妖怪たちを取り締まるため陸軍と妖怪が新組織「妖人省」を立ち上げた。妖怪と人間との間にできた「半妖」ざくろや薄蛍(すすきほたる)、陸軍軍人・総角(あげまき)たちが招集され、悪事をはたらく妖怪たちを退治する任務を請け負うことに。日本の大正時代を思わせる舞台で、ざくろたちは華やかな着物にふりふりレースで武器を取る。

 主人公たちがかわいらしい外見なのに芯の強さを秘めているところは、どの星野作品にも共通している。リボンを付けていようが目に星が飛んでいようが、彼・彼女らはいつもりりしい。ざくろもまた、行方不明の母を思いつつ果敢に敵に立ち向かう。王子様のような外見だが実は怖がりな総角と、内向的な性格の薄蛍、次々に現れる個性豊かな妖怪たちが物語を盛り上げる。

 さらに星野作品で特筆すべきなのは、その画面の美しさだ。麻の葉模様の着物にレースの半襟、ヘッドドレスや大きなリボンと、女の子たちの衣装が画面をにぎやかにしている。カラーイラストの色づかいは乙女チックな作風にマッチしていて嘆息モノだ。そういえば私が以前星野の同人誌を買ったとき、その装丁の凝りように驚いた。起毛素材の紙にまるで焼き印のような美しい印刷。いったいいくらかけているのだ。そういった装飾に凝るのも同人誌の楽しみのひとつだと聞くが、星野の場合には特にそれが顕著だ。きっと星野は楽しんでデザインやカラーをしているんだろうなあ。

 99年のデビュー後、一時期なんとなく星野らしい「キラキラ感」が無くなっていた作品も散見されたが、最近はさらにパワーアップしてキラキラ感が戻ってきたような気がする。BLの「花嫁くん」(リブレ出版)なんて、タイトルからしてもう星野ワールド。花嫁は男の子でかつ女の子っぽい、ということが一読して分かる。表題作でも「おとめ妖怪」と頭につけるだけで「ざくろ」が何者なのか分かる。星野はタイトルセンスも抜群なのだ。青年誌でのさらなる活躍も応援したいが、ぜひBL界にもとどまって欲しい漫画家だ。

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プロフィール

松尾 慈子(まつお・しげこ)
1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、名古屋本社報道センター記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。

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