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心の奥底、流れに映す 「ゆれる」の西川美和監督

2006年07月05日

 今年のカンヌ映画祭監督週間部門に出品され、好評を得た西川美和監督(31)の「ゆれる」が8日から、東京・渋谷のアミューズCQNなどで公開される。1人の女性をめぐる兄弟の確執から、あぶり出される偽善とエゴ。西川監督は「心の内面や良心、人間関係、記憶の不確かさを通して、『ゆれる』人間存在を描きたかった」と語る。

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「観客の心の中で、見るたびに解釈が変わるような作品だといい」と話す西川美和監督=東京都内で

 東京で写真家として成功した猛(オダギリジョー)は法事のため里帰りし、親の商売を継ぐ兄の稔(香川照之)と幼なじみ智恵子(真木よう子)の3人で渓流へ遊びにいく。

 東京暮らしにあこがれる智恵子の心は、稔から猛に移る。3人がそれぞれの思いを隠す中、智恵子がつり橋から転落死し、現場にいた稔が殺人容疑で逮捕される。裁判で明らかになるのは、兄弟愛の裏側にある偽善やエゴ、うそだった。

 物語は、3年前に見た自分の夢から着想を得た。その夢では、殺人を犯した友より、殺人犯とかかわった自分を心配していた。「その後味の悪さや、自分の偽善があらわになったことが、製作の初期衝動になった。夢は抑え込んでいる感情が出やすく、発見の場でもある」と語る。そうした潜在意識の象徴として渓流を使った。「水の流れが生む多様な音、色、見え方は人間心理を表現する助けになった」

 自らの深層心理も映し出す夢を映画に翻案することについては「恥ずかしいという生々しい感情がなければ、映画は説得力を持たない。自分をさらすのも仕事ではないか」と話す。

 02年のデビュー作「蛇イチゴ」も夢に刺激された作品だった。香典詐欺師の兄と、それを告発する妹を軸にした家庭の崩壊劇。男性を軸にすえた作品が続くのは「女性を通して描くと生々しくて、羞恥(しゅうち)心に耐えられないから」という。

 早大在学中、テレビ番組製作会社の就職試験を受けた。不採用だったが、面接官だった是枝裕和監督に見いだされ、さっそく「ワンダフルライフ」の製作に参加し、映画の道へ。

 その恩師、是枝監督も喜んでくれたカンヌ映画祭への参加は、映画作りへの気構えを変えたという。「自己満足で趣味の延長、生産性のない仕事だと胸を張れなかったんです。でも、世界には血眼になって映画を求める人がいることを知り、勇気がわきました」

 順次、各地で公開。

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