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日本の「パプリカ」まずまずの反応 ベネチア映画祭報告

2006年09月07日

 アドリア海に面したイタリア・リド島で第63回ベネチア映画祭が開催中だ。同じ世界3大映画祭のベルリンとカンヌは、今年ひときわ政治色の濃い作品が目立ったが、ベネチアに流れる空気は違う。話題作、セレブリティとスキャンダル、歴史の厚み。晩夏のリゾートの雰囲気が、すべてを映し絵にするようだ。前半の模様を報告する。

 30日の開幕から快晴が続く。日中の気温は30度前後。湿度も低く、しのぎやすい。会場の面前にコテージがずらりと並ぶビーチがあり、夕刻にはそちらから人々が映画鑑賞にやってくる。鑑賞券は安くて8ユーロ、メーン会場の夜の公式上映は監督や俳優が姿を見せることもあって約30〜40ユーロと高額だが、人気は上々だ。

 開幕はブライアン・デ・パルマ監督「ブラック・ダリア」が飾った。西海岸が舞台の暗黒小説が得意なジェイムズ・エルロイが、実際の猟奇殺人を基に書いた小説が原作。エルロイや、共演を機に恋仲がうわさされたジョシュ・ハートネットとスカーレット・ヨハンソンも姿を見せた。ただ評価はいま一歩。ミラノの出版社が出す映画祭特集紙は、批評家と一般客各10人が5点満点で評価する星取表を連日掲げる。そこでは平均3点と2・75点だった。

 コンペティション部門は他にも背筋の凍る作品がちらほら。「スーパーマン」の主演俳優が殺害される設定のサスペンス「ハリウッドランド」、地球規模で子どもが生まれない近未来を描く「トゥモロー・ワールド」……。「π」の異才ダーレン・アロノフスキー監督「ザ・ファウンテン」は、がんの妻を救うために夫が16世紀から現代、さらに26世紀まで時空を跳躍する筋書き。幻惑の映像はカルトの域に近く、かなりの観客をたじろがせた。

 日本から参加した今敏監督のSFファンタジーアニメ「パプリカ」はまずまずの反応に迎えられた。大友克洋監督「蟲師(むしし)」の公式上映は閉幕前夜の8日にある。

 序盤に最も話題を呼んだのはスティーブン・フリアーズ監督「ザ・クイーン」だ。ダイアナ妃の死に苦悩するエリザベス女王を描いた。沈黙を守る女王にマスコミとブレア首相がプレッシャーをかける。女王、首相とも当人とうり二つ。首相が堅苦しい宮廷儀礼に戸惑う姿が笑いを誘った。

 コンペに次ぐ2番手部門とみなされがちな「オリゾンティ」部門が、今年はハイレベルだという声もよく聞かれる。4時間を超す作品を持ち込んだ米国のスパイク・リー、イーサン・ホークや中国のジャ・ジャンクー、日本の青山真治に押井守と、監督の顔ぶれはコンペにひけをとらない。

 映画祭ディレクター、マルコ・ミュラーに今年の作品選択の考えを聞くと「わけのわからないもの。そこから何かを見つけて欲しいんだ」との答えが返った。

 映画祭はまた、開催国イタリアの宝をめでる場でもある。今回は生誕100年のルキノ・ビスコンティ、ロベルト・ロッセリーニ両監督を特集。ロッセリーニの「無防備都市」(45年)の上映は満座の温かな拍手で終わった。映画祭会場は、ビスコンティの代表作「ベニスに死す」の舞台「ホテル・デ・バン」にも近い。その庭園でスターがひしめく様子も見られた。

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