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多民族社会、生き生きと マレーシア映画に新潮流2006年11月11日 マレーシア映画界に新たな潮流が生まれている。多民族社会の現実を独特の視点から切り取ったインディペンデント作品が次々登場し、各地の映画祭で注目を集める。先月の東京国際映画祭(TIFF)でも特集が組まれ、旬の監督の作品が会場を沸かせた。 特集は、TIFFのアジア部門「アジアの風」と国際交流基金が共催。裕福なマレー系の少女と露店で働く華人の少年の恋を描いた「細い目」で昨年のTIFF最優秀アジア映画賞を受賞したヤスミン・アハマド監督の全作品や、今年の釜山国際映画祭グランプリに輝いた華人監督タン・チュイムイの「愛は一切に勝つ」など9本を上映した。どれも低予算のインディペンデント映画。多様なルーツの人物が登場し、英語や中国語など多言語のセリフが飛び交う点が特徴だ。 従来のマレーシア映画はマレー系監督によるマレー語作品ばかりだった。50〜60年代には国民的スター、P・ラムリーが大活躍したものの、政府の規制などで無難な娯楽作が増え、衰退の道をたどっていた。だが、00年ごろからデジタルビデオで等身大のドラマを撮る若手が登場。マレー系6割、中国系3割、インド系1割という多民族社会の現実を活写し、国際的な注目も集めるようになった。 TIFFでも、2年前からこうした作品を継続的に紹介してきた。「去年上映した3本は前売りはさっぱりだったが、期間中に評判が広まり、終盤は売り切れの回も。手応えを感じて今回の特集に踏み切った」と「アジアの風」のプログラミング・ディレクターの暉峻創三さんは話す。 特集で人気だったのがCM界出身のアハマド監督の作品。今回再映された「細い目」は前売り券が即座に売り切れ、最新作「マクシン」も好評だった。 59年生まれの監督はマレー系のイスラム教徒だが、祖母は日本人で夫は華人、英国の大学を卒業した。03年にデビューしてから4本を発表。リベラルな両親とまな娘が織りなす連作で、自伝的要素が濃いという。海外で受賞を重ねた「細い目」は、国内でも独立系では異例のヒットを記録した。 「両親を喜ばせたくて撮り始めた素人映画だから、海外で受け入れられるとは思わなかった」と監督。軽やかで明るい作風だが、他民族への偏見や女性差別に対する批評も随所に滑り込ませる。 「『細い目』は検閲で8カ所もカットされた。両親がくすぐりっこするような何げない場面です。男性中心社会を皮肉ったために『マレー文化の破壊者』とも呼ばれた。でも、観客は支持してくれた。規制も徐々に緩んできています」 特集で上映された華人監督ホー・ユーハンの「Rain Dogs」にアハマド監督が女優として出演するなど、新世代同士の交流も盛ん。非マレー語作品は製作助成や上映機会が限られるなどの障壁もあるが、演劇、音楽、CMなど様々な分野の才能の共同作業が独特の勢いを生んでいる。 「多民族の共生は世界的な課題。新世代のマレーシア映画はそのヒントを与えてくれる」と国際交流基金の石坂健治さん。今回の上映作品を各地で巡回できるよう、日本国内の上映権取得の交渉を進めている。
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