「鉄コン筋クリート」監督、「失われゆくトーキョー」に哀惜
2006年12月25日
マンガ家松本大洋の代表作をアニメ化した「鉄コン筋クリート」が各地で公開中だ。暴力吹き荒れるレトロな街を、凶暴で純粋な2人の少年が疾駆する。米国出身で、CGプログラマーだったマイケル・アリアスが、原作にほれ込み映像化へ奔走、日本人スタッフの支えを得て自ら監督を務めた。その情熱の源には「失われゆくトーキョー」への哀惜の念があった。
 日米双方でCGの仕事をしてきたマイケル・アリアス監督。滑らかな日本語で話す=東京都内で
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古い建物が密集する宝町。屋根や電柱を自在に飛び回る少年シロとクロは、ヤクザからも一目置かれる存在だ。ヤクザを手先とした大規模な再開発計画が動きだし、抵抗する2人は殺し屋に狙われる。重傷を負ったシロが警察に保護され、残されたクロはすさんだ心で暴力に傾く。
93〜94年発表の原作を、アリアスは95年に読んだ。「東京の友だちの家に居候して、街をブラブラしていた。居場所のないクロとシロを自分と重ねていた」
オウム事件、震災の衝撃映像、そして、東京のあちこちで古い街並みを巨大なビル群に変える再開発。
「好きだった同潤会アパートも取り壊し。世界の変化に圧迫されるような不安を感じていた」
その思いは、宝町の風景に込められている。アジア各国の都市をごった煮にしたような熱気あふれる街と、鉄とガラスが冷たく輝く再開発地区。CGで、原作の手がきの味に迫った。
「ゆがんだ建物をCGで造り、手がきの素材を表面に張り付け、汚しやサビを加えた。人の汗がにおうような街にしたかった」
デフォルメのきいたキャラクターの描線も原作通り。ただ、原作の突き抜けたユーモアは薄れ、暴力は生々しく、自壊していくヤクザの群像劇は情緒的だ。
「映像化すれば、アクションに重みや痛みが加わるのは分かっていた。暴力的シーンはなるべく削ったけれど、残したシーンには、そんな痛みが伝わるようにした。無意味に楽しく暴力を振るうような描写はするべきでないと思った」
消えゆく街を惜しむヤクザの幹部の声を、舞踏家田中泯に依頼した。「『たそがれ清兵衛』を見て、この人だと思った。素晴らしい演技で、泣きながらアフレコを聞いていたよ」
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