邦画で相次ぎ「きょうだい」物語 他者知る手がかりに
2007年01月12日
邦画で「きょうだい」の物語が目立っている。06年のキネマ旬報ベストテンでは、生家を守る兄と田舎を飛び出した弟がともに登場する「ゆれる」と「雪に願うこと」が上位に入り、07年はふたつの双子の物語から始まる。「最も身近な他人」の姿はいま、どう描かれているのだろう。(野波健祐)
昨年話題となった「きょうだい」映画には、血のつながらない兄妹が手を携えて生きる「涙そうそう」、兄の罪を社会的にひきうけた弟の苦悩を描いた「手紙」もあった。いずれも観客の涙を誘い、興行面でも成功を収めた。
20日公開の「僕は妹に恋をする」は、双子の兄妹の「禁断の恋」を描いた人気漫画が原作だ。幼少期に結婚の約束をした仲のいい兄妹が高校生となり、結ばれてしまう。2人にそれぞれ思いを寄せる同級生をからませつつ、思春期ならではの心の移ろいを描く。
早春公開予定の「松ケ根乱射事件」は、ともに雪深い田舎町で暮らす、警察官の弟ととりえのないまま家業を手伝う兄の物語だ。社会の流れから置いてけぼりにされたような日常が、兄の起こした交通事故をきっかけに、ゆがんでいく。
「きょうだい」映画は昔からあった。キネ旬ベストテンには「キクとイサム」(59年)、「おとうと」(60年)といった名作が並ぶ。同じテーマでいまを描くには、新しい「きょうだい」の姿が必要になってくる。たとえば、30歳を過ぎても独身のまま同居を続ける仲良し兄弟を描いた「間宮兄弟」のように。
しかし、多くの作品はある意味、保守的だ。「松ケ根」の要領よく世間を渡る弟と不器用な兄の姿は、そのまま「ゆれる」の兄弟に当てはまる。この作品は幼なじみの女性の転落死を巡り、被告人となる兄と、兄の証人となる弟の心理をていねいに描く一方、もう1組、2人の父親と都会で弁護士を営む叔父との関係を相似形のように持ち込むことで、「兄弟の確執」の普遍化がなされている。
一見、扇情的な「僕妹」もまた、原作の激しい性描写を抑え、妹を思う兄の内面を同級生たちとのかかわりから浮かび上がらせたことで、「純愛もの」としての普遍性が高まっている。
むしろ「きょうだい」関係の変化は現実世界の方が顕著だ。国立社会保障・人口問題研究所の統計によると、夫婦の最終的な出生子供数「完結出生児数」が05年調査で2.09人となり、30年間ばかり2.20人前後で推移していた「きょうだい」数が、ぐんと減った。3人きょうだいが減り、一人っ子や子供を持たない夫婦が増えた、との分析だ。「自分さがし」が話題となり、他者を見ようとしないと言われる時代に、家庭から「最も身近な他人」の姿が薄れつつある。
昨今の「きょうだい」映画は「きょうだいもの」ではない。見えない「他者」への手がかりを、自然な形で意識させる装置として「きょうだい」が使われているのだ。そう解すれば、保守的な「きょうだい」映画人気にも納得いく。
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