現在位置 : asahi.com > 文化芸能 > 芸能 > 映画 > 記事 ここから本文エリア

日本映画、完全復活? ドラマ健闘、ヒットも多様化

2007年01月31日

 日本映画のシェアが21年ぶりに外国映画を上回った。スクリーン数の増加に加え、テレビ局主導で製作した作品のヒットもあり、邦画の興行収入は史上初めて1000億円を超えた。日本映画製作者連盟(映連)の30日の発表は、日本映画の「完全復活」を物語るのだろうか。

グラフ

  

 昨年の邦画は興収百億円超のメガヒットこそなかったが、50億円以上が6本、10億円以上が28本といずれも過去最多だった。

 中でも目を引くのはドラマの健闘。子供向けのアニメシリーズをおさえ、一般向けの映画が興収上位に並んだ。邦画シェアが歴代最低の27%だった02年はベスト5がすべて子供向け作品だったのと比べると、変化は明白。年配夫婦向け割引の利用者が全入場者の7%近くに上るなど、「団塊世代が見に来たことが勝因の一つ」と映連幹部は話す。

 好況を先導したのは東宝だ。公開27本中15本が興収10億円を超え、「ゲド戦記」「海猿」など8本が邦画ベスト10入り。興収は過去最高の587億7000万円。東映と松竹の興収総額の2倍以上という一人勝ちに、「ワインで言えばビンテージイヤー」と同社の島谷能成常務。

◇テレビ局主導

 同社のヒット作はテレビ局主導で製作された。原作の出版社、広告会社なども参加して多角的なマーケティング戦略を展開する「製作委員会」方式で、幅広い観客をつかむことに成功した。自社製作を重視してきた東映、松竹なども追随。昨年のベスト10すべてをテレビ局と連携した映画が占めた。

 テレビ局は多角化やコンテンツ確保のために映画に参入したが、映画会社にはテレビ局ならではの宣伝力も大きな魅力。公開前に大量のCMを流し、特番を組み、出演者らが様々な番組にゲスト出演する。全国区のPR効果がシネコン時代のヒットを支えた。

 だが、この方式を危惧(きぐ)する声もある。映画ジャーナリストの大高宏雄さんは「わかりやすさを重視した結果、似たような感動ドラマがあふれた。いずれ飽きられる」と指摘。東宝の島谷常務も「秋口から作品に明暗が出てきた」と認め、「邦画活況を地に足のついたものにするのは、07年が勝負」と話す。

◇公開数も急増

 邦画の公開本数も増えている。06年の劇場公開は417本で、33年ぶりに400本台にのった。03年は287本だからめざましい急増だ。

 作品も多様化し、独立系からも様々なヒットが生まれた。「フラガール」は公開後に上映館を倍増し、15億円近い興収をあげた。「かもめ食堂」「寝ずの番」「佐賀のがばいばあちゃん」「ゆれる」なども3億〜5億円のヒットに。地域が製作に協力するフィルムコミッションの普及で地方発の映画も増え、愛知県のユナイテッド・シネマ豊橋18では地元が舞台の「早咲きの花」が「ゲド戦記」をしのぐ人気を集めた。

 「フラガール」を製作したシネカノンの李鳳宇(り・ぼんう)社長は、「昔なら1億円台に乗せるのも困難な作品も多い。シネコン時代でスクリーン数が増えた環境を生かせた」と語る。ユナイテッド・シネマの田部井悟マーケティング部長も、「近所で様々な作品が見られる状況が根付きつつある。これを継続したい」と話す。

◇「敵失」背景に

 ただ、「邦洋逆転」は、ハリウッド映画をはじめとする洋画の不振という「敵失」に乗じた面もある。昨年の洋画は「ハリー・ポッター」「パイレーツ・オブ・カリビアン」が興収百億円を超えたが、話題作「ダ・ヴィンチ・コード」は91億円止まり。05年は39本あった10億円以上のヒット作は22本に激減した。

 ハリウッドの不振の要因は、企画難。シリーズものやリメークなど新味のない作品が続き、観客離れを招いた。本国でも05年の動員数は20年ぶりの大幅減だった。

 韓流ブームも失速。05年はペ・ヨンジュンの「四月の雪」など3本が10億円を超えたが、昨年はゼロだった。

 また、邦画全体が好況だったわけでもない。

 シネカノンの李さんは「映倫審査を通さない低予算のビデオ作品なども加えると、昨年公開された邦画は700本以上。上位28本が興収の7割を占め、負け組の方が圧倒的に多い。過当競争で支えきれない会社が出ても不思議ではない」と指摘する。

 過当競争は、映画館も同様だ。スクリーン数は前年より4.6%増えたのに、邦洋合わせた興収は2.2%増、入場者数は2.4%増の1億6427万人にとどまり、パイは大きくなっていない。

 洋画の観客が邦画に流れた形の「逆転劇」は、ハリウッドが息を吹き返せばすぐ覆される。これに対抗し、市場拡大を果たせるかに、邦画復活の真価がかかる。映連の松岡功会長は「来るべき全国3500スクリーン時代に2億人動員を目指したい」と話している。

PR情報


この記事の関連情報


ここから広告です
ここから広告です
広告終わり

マイタウン(地域情報)

∧このページのトップに戻る
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。 Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.