映画監督足立正生、35年ぶりに新作「幽閉者」
2007年02月02日
性や政治を前衛的手法で描き全共闘世代を魅了した映画監督・足立正生が、35年ぶりの新作「幽閉者」で映画界に帰還した。日本赤軍の同志だった岡本公三容疑者をモデルに、異国の獄につながれた男の葛藤(かっとう)を描く。幻想と現実を往還する鮮烈な映像は、「あの時代」への感傷とは無縁。管理社会を生きる現代の若者を触発したいという。
60年代に「女学生ゲリラ」などの野心的なピンク映画で衝撃を与えた「アングラ界の旗手」は、いま67歳。「赤軍―PFLP・世界戦争宣言」を発表後の74年、パレスチナで日本赤軍に合流。97年に潜伏先のレバノンで岡本公三らとともに逮捕され、00年に強制送還された。
帰国後に別件で受けた有罪判決の執行猶予期間も明け、満を持しての復帰作が「幽閉者」。自爆テロに失敗して投獄された男が、激しい拷問で精神の均衡を崩していく様を追う。岡本が実行犯に加わった72年のテルアビブ空港乱射事件がモチーフだが、映画では人物の固有名詞をはぎとり、極限下の心理劇に仕立てた。
「革命青年はこんなにバカで純粋だった、なんてノスタルジックな映画を撮る気はさらさらない」と足立監督。「当時をいくら再現しても、しょせん仮想現実。過去に拘泥するより、今を生き抜く手がかりを示したかった」と語る。
「日本に戻って、若者たちが僕らとは逆のしんどさを抱えていると感じた。枠を破るのではなく、なんとか収まろうともがく。皆が同じ問題に直面してれば連帯もできるが、いまは個別にパッケージされてしまっている。まさに幽閉者。そんな若者たちと一緒に考える映画を作りたかった」
死に損なった無念と生への渇望、革命への情熱と懐疑……絶えざる自問の中で虚実の境界を見失う男を、田口トモロヲが全身で表現。元頭脳警察のPANTAや状況劇場出身の大久保鷹らが共演し、赤瀬川原平、瓜生良介、若松孝二ら多彩な同世代も登場する。革命戦士役には本多章一、ARATAら事件後に生まれた世代が志願。刺激的な音楽は大友良英とジム・オルーク。足立ファンのオルークは出演もしている。
「同世代は戸惑いの声もあったが、若い人がこの奇妙なリアリズムにはまってくれたのはうれしかった。『こんな状況でなぜ自殺しないのか』といった率直な意見に鍛えられた。35年ぶりの現場で、パワーをたくさんもらいました」
3日から東京・渋谷のユーロスペースで公開、続けて名古屋、大阪など各地を回る。足立監督の獄中絵画展も中野の書店「タコシェ」で開催中。岡本の肖像や、刑務所の日常、折々の感情をぶつけた抽象画などが展示されている。
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