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人間性を回復する旅 セロー監督「サン・ジャックへの道」

2007年02月19日

 仲の悪い中年の、兄と姉と弟の3人が、はるばる巡礼の旅を共にして、閉ざした心を開いていく物語「サン・ジャックへの道」が3月10日、東京・シネスイッチ銀座で公開される。来日したフランスのコリーヌ・セロー監督は「消費や欲望の機械と化した現代人が、人間性を回復する過程を描きたかった」と語った。

 薬依存の長男、失業中の夫に代わって家計を支える頑固教師の長女、酒浸りの次男は、親の遺産相続の条件で、フランスからスペイン西端のキリスト教の聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラまで1500キロを巡礼しなければならない。

 「現代人は、厳しい人生を耐え抜くため薬に頼ったり、心を閉ざしたり。巡礼の旅を描く中で、他者と手を携えることの大切さを示したかった」と監督。

 3人のほか、気楽な山歩きと勘違いした友達同士の若い女性2人と、アラブ系移民の少年と、そのいとこで字を読み書きできない少年らが旅の道連れ。いとこの少年は、終着地がメッカだと誤解して張り切る。

 「多様性を認め合うことが作品の主題の一つ。読み書きできないことや、貧富の差は、心の豊かさと関係ありません」

 「巡礼者」たちは美しい自然や、他の旅人らとふれあう中で、それぞれにストレスを抱えた暮らしにひとときの別れを告げる。寝食や悲喜を共にしてエゴや屈折した感情を捨てる。長男は薬なしで暮らせることを知り、長女は少年に読み書きを教える中で心の殻を破り、その少年は字を覚えて視野を広げる。

 監督の過去の作品を見ると、独身の男たちが赤ちゃんを育てる「赤ちゃんに乾杯!」、弁護士が妻の家出などで危機に陥る「女と男の危機」など、想定外の状況に巻き込まれた人々の右往左往を巧みに描いてきた。今回、巡礼を題材にしたのは、「人々の心のありようが象徴的に、凝縮された形で現れるミクロコスモスに思えたから」と言う。

 「社会は、人間にきずなを断ち切らせ、欲望や消費のためのコマであることを強いる。ただ歩くという行為の中から、本当の自由や幸せとは何かを知るヒントを得てもらえることでしょう」と話した。

 順次、各地で公開。

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