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ベルリン国際映画祭コンペ部門、金熊賞に「トゥヤの結婚」

2007年02月20日

 第57回ベルリン国際映画祭は18日夜(日本時間19日)、11日間の宴の幕を閉じた。社会派映画が集まることで知られる映画祭だが、今年はコンペティション部門出品作の半数が戦争や過去の歴史の暗部を描いたものだった。

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金熊像を手に受賞会見に臨んだ「トゥヤの結婚」の王全安監督(左)と主演の余男

 常連監督の新作発表会のような最近のカンヌやベネチアと違い、ベルリンは作家の名前より作品の主題に重きを置いているように見える。「ナチスという歴史を体験した街から、世界が抱える様々な問題を伝えたい」と映画祭ディレクターのディーター・コスリック氏。戦禍のベルリンが登場するハリウッド映画「グッド・ジャーマン」「グッド・シェパード」を序盤の目玉に据えたのも、歴史から現実を見直そうとする姿勢の表れかもしれない。

 地味で堅実な作品が並んだコンペだが、対象作22本から選ばれた受賞リストは、さらになじみの薄い名前が並んだ。ポール・シュレーダー監督率いる審査委員は、未知の才能を世界に紹介する手段として賞の活用を試みたようにも見える。

 最高賞の金熊賞は中国の王全安(ワン・チュエンアン)監督の第3作「トゥヤの結婚」。草原の砂漠化で生活に窮した内モンゴルの遊牧民の女性が、夫と子供を養うために、金持ちと再婚しようとする。経済や環境の変化が伝統的生活にもたらす影響を寓話(ぐうわ)仕立てで描いた。

 賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督「三峡好人」のベネチア国際映画祭金獅子賞に続く中国映画の大金星。コンペでは他にも中国人監督作品2本が上映されたが、ともに海外受けする社会問題や地方色を織り込み、洗練された演出を見せた。このしたたかさ。新世代の躍進は続くだろう。

 第2席の審査員賞は33歳のアルゼンチン人、アリエル・ロッター監督の第2作「ジ・アザー」。日常に疲れた中年男の自分探しの旅。その戸惑いを感性豊かに表現したフリオ・チャベスが男優賞を受賞した。

 監督賞はレバノン停戦直前のイスラエル兵を描いた「ボーフォール」のヨセフ・シダー。いずれ放棄する要塞(ようさい)を守るため、激しい爆撃にさらされ続ける若い兵士の姿は、特別招待作品の「硫黄島からの手紙」の日本兵と驚くほど似ていた。

 今回最も激戦だったのは女優賞。孫の治療費のために風俗嬢になる「イリーナ・パーム」のマリアンヌ・フェイスフル、エディット・ピアフの半生を熱演した「ラ・ヴィ・アン・ローズ」のマリオン・コティヤールら有力候補をおさえ、地元ドイツの「イェラ」のニナ・ホスが受賞。旧東独と西独の経済格差を遠景にしたミステリーで、寡黙なヒロインの鋭いまなざしが緊張感を生んだ。

 国際批評家連盟賞の「私は英国王に給仕した」は、今回最も見ごたえがあった1本。チェコの名匠イジー・メンツェルが、得意のとぼけた語り口で歴史に翻弄(ほんろう)されたひとりのチェコ人の運命を描く。悲惨な話だからこそ、軽やかに。老練の作劇術だった。

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