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菊地凛子の「挑戦」に評価 新鮮な演技でオスカー候補に

2007年02月28日

 第79回アカデミー賞で助演女優賞候補になり、世界の注目を集めた菊地凛子(りんこ)(26)。日本では、話題性が先行したが、海外では、この「無名の新人」の魅力と力に対して、驚くほど高い評価が与えられた。

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アカデミー賞授賞式の会場に着いた菊地凛子=AP

 助演女優賞候補にはケイト・ブランシェットら実力派とともに、二人のシンデレラガールがそろった。世界では無名の新人といえる菊地と、やはり新人で「ドリームガールズ」で好演したジェニファー・ハドソン。栄冠はハドソンに輝いたが、シンデレラぶりは菊地も負けていなかった。

 新藤兼人監督「生きたい」で映画デビューし、出演作は多いが、日本でも地味なバイプレーヤーという印象はぬぐえなかった。出演作「バベル」では、ろう者役。手話で語り、演技で大きな比重を占める肉声は映画の観客に届かない。なのに、輝く「世界の5人の助演女優」に選ばれた。

 この作品では、すでに「ナショナル・ボード・オブ・レビュー」など複数の映画賞でブレークスルー賞を獲得。一気にオスカーに向けた階段を駆け上がった。

 何が、海外で人々の心をひきつけたのか。

 米の人気ドラマ「フレンズ」の脚本を手がけるブライアン・ボイルは「演技とは思えない自然体に驚いた」と語る。オーストラリアのAP通信記者ピーター・ミッチェルも「5人の候補で最も挑戦的だった。ハドソンのような、プロモーションの大きな力が得られなかった」と惜しむ。

 そう「挑戦」こそが菊地の持ち味。手話はもちろん、長時間の訓練を重ねて演じたバレーボールの場面。全裸シーンもあり、体当たりの演技が新鮮に映ったようだ。菊地自身も「挑戦することで、自分が自分でいられる」と語る。

 フランスのジャーナリストで、ゴールデングローブ賞の投票権を持つジャンポール・シャレーは「大胆な役を大胆に演じ光った。『バベル』最大のサプライズ。ゴールデングローブもオスカーも取るべきだった」と語った。

 菊地は、スクリーンの外でも「挑戦」を重ねた。

 「バベル」が招待された昨年のカンヌ映画祭では、金髪、和服姿で赤じゅうたんを歩いたり、シャネルを身にまとってみせたり。今回の授賞式にも、大胆なシャネルのドレスで登場。「演技やファッションで冒険をするリンコのスタイルが好き」(米フォックスTVのプロデューサー、キャルロタ・エスピノーザ)といった声も上がる。

 「ハリウッドは今、新しい題材や才能が欲しくてたまらない」。米ABCテレビのプロデューサーのデリック・ヤネヒロは言う。その欲求から、菊地に焦点が合ったとみる。「日本人が日本語劇の中で手話で演じ、ノミネートされたこと自体が、アカデミー史上、歴史的事件だ」とも。今回のノミネートは、ハリウッドが一歩踏み出した挑戦だったのか、それとも、新奇さを求めたゆえのことなのか。

 授賞式直前、菊地はかみしめるようにこう話した。

 「2年間かかわった『バベル』から、ここで卒業になる。また一歩、先に踏み出さなければならない」

 ハリウッドでの次回作も決まった。菊地の挑戦は続く。(敬称略)

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