現在位置:asahi.com>文化・芸能>芸能>映画> 記事 パレスチナ自爆描いた「パラダイス・ナウ」 アブアサド監督が来日2007年03月06日15時39分 パレスチナの自爆を扱いながら、昨年の米アカデミー賞で外国語映画賞の候補になった話題作「パラダイス・ナウ」のハニ・アブアサド監督が来日した。自らパレスチナ人で「映画は抵抗の手段」と語るが、「政治の道具ではない」と言い切る。観客をとらえるのは政治的メッセージではなく、自爆を控えた若者の心の葛藤(かっとう)、家族への思いや友情……、つまりパレスチナを舞台とした人間のドラマである。 幼なじみの2人のパレスチナ人青年が主人公。過激派組織に属し、自爆作戦の実行者に選ばれる。腹に爆弾を巻き、イスラエルに潜入する。初日は境界でイスラエル軍と出会い、逃走。翌日、2人はイスラエルに入るが、1人は自爆を断念し、もう1人は決行する。 映画は2人の2日間の行動を追う。家族や組織の幹部、思いを寄せる女性との会話を交え、「自爆に意味があるのか」という問いを巡って葛藤が展開する。 「圧倒的な軍事力を持つ相手に対抗するにはこの方法しかない」という報復の論理と、「殺し合いが続くだけだ」「モラルに基づく別の方法があるのでは」という理性の訴えが交錯する。 「物語にリアリティーを与えるためにドキュメンタリーの手法をいれた」と語る。イスラエル占領下のヨルダン川西岸ナブルスで5カ月のロケを行った。近くで過激派を狙ったイスラエルのミサイルが破裂した。パレスチナ過激派からも脅迫を受けた。6人のドイツ人技師は途中で退去した。 しかし、映画には攻撃シーンも派手なアクションもない。「パレスチナは暴力であふれている。映画では新しい世界を見せなければならない」と語る。「耳を澄ましてもらうためにはささやくことだ」とも。 自爆者はパレスチナでは人間を超えた「スーパーマン」。イスラエルでは人間の心を失った「怪物」。人間として苦悩する自爆者を描いたドラマは、観客を「新しい世界」に誘う。 映画が、9・11事件後に自爆テロに敏感な米国で評価された意味は大きい。「イスラエルは兵器という文明の醜い産物を使って我々を押さえ込む。私は力では対抗できない。映画という文明の美しい産物を生み出すことで抵抗し、生き延びる」という姿勢が、映画の国で通じた証拠だ。 3月10日から東京・恵比寿の都写真美術館で公開。休館の月曜と4月28日以降は渋谷のアップリンク・ファクトリー。順次各地で。 PR情報 |