現在位置:asahi.com>文化・芸能>芸能>映画> 記事 弱い人間ほど遠い救済 「バベル」のイニャリトゥ監督2007年04月16日15時31分 言葉や宗教、政治の「壁」が生む悲劇を、啓示的に描く「バベル」が28日、各地で公開される。カンヌ映画祭など世界で高く評価され、菊地凛子(りんこ)がアカデミー助演女優賞候補になって話題を呼んだ。監督はメキシコ出身のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。過去の作品に共通する、贖罪(しょくざい)と救済への心の旅路の物語だ。 一丁の猟銃が、海を越えて悲劇の連鎖を生む。 モロッコの子供がいたずらで放った銃弾が、観光バスの米国人女性(ケイト・ブランシェット)を撃つ。夫(ブラッド・ピット)は助けを求めるが、住民と言葉が通じない。米国はテロと見なし、モロッコ政府は助けない。皮肉にも、この悲劇で夫婦はきずなを取り戻し、幼子を失った罪悪感を分かち合うが、留守番の子供たちに悲劇が……。 「コミュニケーション不全による悲劇の物語。だが、言葉や宗教の違いによる誤解や恐怖心を乗り越える姿に、人間の希望の光を見いだしてほしい」 心と心を隔てる「壁」を端的に描いたのが、日本での撮影場面だ。菊地演じるろうの高校生は奇異の目にさらされ、心はすさむ。ふれ合いを求めて仲間とドラッグを飲み、さらに父(役所広司)の猟銃が、はるかモロッコで「また」悲劇を生んだ。父子は言葉なしに和解できるのか、と問う。 「米国人夫婦も、日本の父と娘も、手を握り合い、肌を触れ合うことで救われ、再生の機会をつかむ。その私自身の信念をフィルムに映し込んだ」と語る。 ただ、誤射したモロッコの子供たちには、救済が用意されていない。「貧しい国、弱い立場の人間ほど、失うものが大きく、救済も遠いという現実を象徴させた。現実の戦争にも見て取れる世界のアンバランスを描きたかった」と言う。 監督は「アモーレス・ペロス」「21グラム」で、他者や思想、神を信じ、逆に裏切ることで巡り巡る因果を描いた。今回は、天に届くバベルの塔を作ろうとした高慢への罰として、神が人間同士の言葉をたがえた――との旧約聖書の物語に思いを重ねた。 「世界は隔てなく空気でつながっている。スリランカの虎が吸った空気、ブッダが吸った空気を今、自分が吸っているかもしれない。人の心も、無数の作用・反作用を経て、世界でつながっていることを示したかった」 PR情報 |