現在位置:asahi.com>文化・芸能>芸能>映画> 記事 「予定調和ではない感動を発見して」 映画「東京タワー」の松岡錠司監督2007年04月25日15時25分 200万部を超すベストセラー「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」が映画化された。母と息子の30余年にわたる情愛を、小さなエピソードを丹念に重ねて描く。「予定調和ではない感動を観客一人ひとりに発見してもらいたい」と監督の松岡錠司は語る。
原作は福岡の炭鉱町で育った作家リリー・フランキーの自伝的小説。出版直後に読んだ松岡監督は、即座に映画化を希望し、著者のサイン会にも足を運んだ。 「ちょうど、自分の体験をもとに親の死を扱う企画を考えていた時期。僕が書きあぐねている主題をリリーは全身全霊で描ききっていた。そのことにまず震えた」と監督は振り返る。 テレビドラマ版には一切関与しなかったフランキーだが、映画にはひとつだけ注文をつけた。脚本を同郷の松尾スズキに依頼すること。同世代の松尾は、自身の少年時代の記憶もところどころに織り込みながら、母子の歩んだ歳月を丁寧に再現した。 上京してアーティストになる「ボク」を演じたのはオダギリジョー。「いいかげんだが共感を呼ぶ男は彼しかできない」と松岡監督たっての指名だった。母ひとり子ひとりで育ったオダギリは「実生活と重なりすぎる」と固辞し続けたが、実母に促され出演を決意したという。 「撮影後にオダギリは『泣かせに走ったら抵抗するつもりだった』と話していた。こちらは脚本通りに撮っただけだけれど、湿っぽくせず淡々と紡いでいこうという気持ちは、スタッフ全員が共有していた。映画ならではの豊かな時間と空間を作り出せたと思う」 風来坊の「オトン」を小林薫が好演。樹木希林扮する「オカン」の若き日を娘の内田也哉子が演じているのも話題だ。 「希林さんは圧倒的にゴージャスな女優。彼女を前にすれば、他の役者も真剣勝負せざるを得なくなる。一方、也哉子ちゃんはびっくりするほど素人。でも、まっさらな存在感や母性的な魅力があった」。2人をあえて似せようとせず、ありのままを撮るよう心がけたという。 「脚本も配役も、この種の大作としては冒険だった。『失敗なんか気にせず、お祭りやってよ』というリリーの言葉に背中を押された」と監督。作家性の強い「アート映画」と、大宣伝で売る「娯楽作」に二極化したいまの日本映画界に欠けている「ふつうの映画」を目標にしたという。 「根っこはインディーズの人間が集まり、メジャーでこんな試みができたことの意義は大きい。『いい話だった』ではなく『いい映画だった』と感じてもらえる作品になったと思っています」 PR情報 |