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スティール監督、ドキュメンタリー映画「ブリッジ」で自殺者に迫る

2007年05月28日16時59分

 米国のゴールデンゲートブリッジから飛び降り自殺する人々を映したドキュメンタリー映画「ブリッジ」が6月16日から、東京・恵比寿ガーデンシネマなどで公開される。「なぜ自殺を止めなかったのか」との批判から、上映を拒否する映画祭も出た。「見たくないものは見ないという姿勢では、自殺を防ぐヒントも見落としてしまう」と、エリック・スティール監督は語った。

写真「映像は脳裏に残る。映画を見て、自殺について議論をしてほしい」と語るエリック・スティール監督=東京都内で

◇遺族ら訪ね、心の軌跡追う

 37年の建設以来、約1300人が自殺したといわれる橋のたもとにカメラを構え、04年の1年間、橋の様子を毎日撮り続けた。遠くから「傍観」し、時に望遠レンズで迫った。海面から66メートルの高さにある橋から24人が飛び込み、その一部を映し出している。

 自殺を止めなかったのか――。

 「警察や橋の管理者の電話番号を短縮ダイヤルに登録し、不審とみれば通報する態勢を整えて撮影した」という。それでも、「多くの自殺者は内面の悲しみを表に出さず、兆候をとらえづらい。それが問題を深刻にしている」と話す。

 水しぶきが上がって気づく場合も多かったが、6人の自殺を止めたという。映画には、通行人が自殺をはばむ場面が複数ある。

 身元不明者以外約20人の遺族らを訪ねて、話を聞いた。映画は、そうしたインタビューに長時間を割く。

 10代からうつと自殺願望に悩み続けた30代男性。自殺未遂を重ねた20代男性。自分の人生は失敗だったと悔やみ、アルコール依存症になった50代男性。そのほか、心の病を治療する金がなかったり、恋愛関係や経済的な行き詰まりでうつになったりした人々の姿を浮き彫りにする。

 00年に飛び込んで重傷を負った20代の若者にも話を聞いた。「橋の上で40分間立ちつくしていたが、誰も声をかけてくれなかった」と語り、飛び降りた瞬間、「死にたくないと思った」と振り返る。

 「交通の往来が多く、それまで自殺が多発した場所を選ぶのは、止めてほしいという感情のかけらがあり、また、誰かとつながりたいというかすかな望みの現れではないでしょうか」と監督はみる。

 ピュリツァー賞受賞作を映画化した「アンジェラの灰」の製作をへて、今回が初監督だ。「作り手である前に、人間であることが大前提でした。撮影対象に介入するべきかどうかという作り手のジレンマは一切なかった」と強調した。

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