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消えゆく巨大銀幕 観客減り小回り志向に

2007年10月02日11時02分

 映画の楽しみの一つは、たくさんの観客とともに、圧するような大きなスクリーンで見ることにあるだろう。ただ、大スクリーンの映画館は街から姿を消しつつある。1950年代の最盛期に比べれば、映画館の年間入場者数はひとケタ少ない現在。観客数が十分でないと、巨艦のような劇場の運営は当然、苦しい。巨大銀幕の最近の事情を聞いてみた。

イラスト

スクリーンサイズの比較

 今の大スクリーン映画館の代表は東京の新宿・歌舞伎町の「新宿ミラノ1」(旧ミラノ座)だ。56年開館。横長の「シネマスコープ」サイズで上映すると画面は7.4メートル×17.4メートル。70ミリフィルムの場合は8.85メートル×20.2メートルに広がる。定員1064人。1000人超の劇場は今や珍しい。

 9月の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」。公開日は全回満員だった。「1000人以上のお客さんと大スクリーンで映画を見るのは快感ですよ」と総支配人の横田浩司さん。

 ただ、大劇場は不入りだと、その大きさを持て余す。旧ミラノ座の、1カ月の観客動員の最高は82年12月の「E.T.」で、18万8000人入った。今は半分に届く作品も、まずない。昨年には、隣接する規模の小さい2館と一緒になって名称を変え、新宿ミラノ1・2・3とした。作品の動員力に合わせ、サイズの違う3館で、柔軟に番組編成をしようという発想だ。

 東京・旧有楽座、渋谷パンテオン、名古屋・中日シネラマ、大阪・南街劇場など、大スクリーン劇場は大都市に多かった。中でもテアトル東京と大阪のOS劇場は東西の代表格だった。前者のスクリーンは8.7メートル×28メートル、後者は9.8メートル×19.4メートル。映写機3台で同時に映す、迫力あるシネラマ方式を採用した。

 OS劇場のシネラマは55年開始。劇映画シネラマ第1作「西部開拓史」は1年半近く公開された。運営会社OSの伊藤鑑映画興行部長は「ダフ屋が出るほど人気で修学旅行のコースにもなりました」。テアトル東京は62年にスーパーシネラマ劇場に改装。70年代に勤務した東京テアトル顧問の高橋真さんは「あそこに勤めていることは誇りでした。大観衆が一斉に笑うと波打つようでね」と振り返る。

 テアトル東京は81年、OS劇場は91年閉館。老朽化や観客減などが理由だが、コスト高から大スクリーンに適した70ミリフィルムで作品を撮らなくなったことも背景にある。今の映写機は、ほぼ100%が35ミリという。「35ミリ上映ではスクリーンを大きくするにも限度がある。解像度や明るさの点で、大きすぎるスクリーンは逆にサービス低下になるのでは」との指摘もある。

 『映画館と観客の文化史』を著した京都大大学院の加藤幹郎教授(映画学)は「巨大スクリーンで、非日常性という映画の特性はさらに生きた。あこがれの人物や風景が大画面に映ると観客は日常を忘れられた」と話す。

 最近の映画館は複数のスクリーンを備えるシネマコンプレックス(シネコン)が主流で、スクリーンは横15メートル以下、定員100〜300人が中心。ただ、中には大画面を持つシネコンも。東京の「ユナイテッド・シネマ豊洲」のそれは9.29メートル×22.6メートル。「日本最大級」をうたう。

 ユナイテッド・シネマの田部井悟マーケティング部長は「競合激しい中で差別化をはかる目的。市場調査の結果、スクリーンの大きさにこだわる人がかなり多かった」と言う。ただし収容定員は415人。かつてのような1000人級でないのは、合理的経営のシネコンらしい。

 他に大スクリーンが残っているのは博物館や水族館に設けたシアターだ。大阪のサントリーミュージアムには、3D上映が可能なIMAX(アイマックス)シアターがあり、サイズは20メートル×28メートル。

 IMAXのような大型映像を上映する施設は国内に現在28ある。だが、最盛期の半分以下で、多くは集客に苦しんでいるという。

 加藤教授は「米国などでIMAXが浸透しているのは、映画が観客を巨大スクリーンで圧倒するスペクタクルに回帰していることを意味する。日本になかなか定着しないのは立地条件の悪さと集客力のあるコンテンツが不足しているからだろう」と話す。

 北米などでは、シネコンにIMAXシアターを加えた施設があり、「ハリー・ポッター」などが3Dの大画面で楽しめるという。国内では東京の品川プリンスホテルに、02年にこの種の施設ができたが、今年3月でIMAX部分は閉じた。

 大型画面を上映する施設が参加する「日本大型映像協会」の鈴木広幸事務局長は「大型画面の3Dが日本で根付かないことは世界でも不思議がられている。宣伝不足など主催側の努力不足もあるが、上映中に専用メガネをかけることがなじまないのかもしれません」と話している。

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