現在位置:asahi.com>文化・芸能>芸能>映画> 記事

新藤兼人監督、故郷にささげる新作映画 95歳、現場に情熱

2007年11月24日15時44分

 今年95歳を迎えた新藤兼人監督が新作を製作中だ。自分自身に大きな影響を与えた小学校時代の恩師を題材にした「石内(いしうち)尋常高等小学校 花は散れども」。来年1月に完成、秋に公開される予定だ。

写真

撮影現場で指示する新藤兼人監督=静岡県川根町で

写真

「花は散れども」撮影中の大竹しのぶ(左)と豊川悦司(右)

 舞台になるのは、広島市の郊外にあった「石内尋常高等小学校」。大正時代と戦後、柄本明演じる市川義夫先生とクラスの子供たちの人間模様を描く。軸になるのは、級長で脚本家となった良人(豊川悦司)と、料亭の女将(おかみ)となったみどり(大竹しのぶ)。良人は新藤自身の分身でもある。

 新藤監督は故郷・石内村(現・広島市佐伯区)など広島を中心にロケをしたが、最後のシーンは蒸気機関車とレトロな駅が必要なため大井川鉄道の家山駅(静岡県)で撮影した。

 線路脇で車いすにのった監督が精力的に指示を出す。重要な指示ともなると、車いすを降り、支えられながらも線路をまたいで、ホームにいる豊川と大竹らに近寄る。また、夜汽車という設定の撮影でも車いすを降り車両に乗り込んでの演技指導。豊川に「ちょっと斜めに闇をみておいてください」と声をかけた。

 豊川は初めての新藤作品だ。「芝居やせりふがその場で変わり、シーンがどんどんレベルアップしていく、とてもクリエーティブな現場だった。監督の大きな手のうえで楽しく仕事をさせてもらった。改めて役者としての立ち方、たたずまいの豊かさを学んだ気がします」という。

 大竹は「生きたい」「ふくろう」に次いでの参加。「何が起こるかわからないところが魅力。今回も突然せりふが変わったり、牛がでてきたり、おもしろいことがいっぱいあった。新藤さんの作品は、監督のエネルギーが画面からでている」と話した。

 新藤は撮影の合間にインタビューに応じ、作品にかける思いを熱く語った。「子供が親を殺す、親が子供を殺す時代の中では情操教育が大切。黒板と生徒の中間にたっている人柄が子供の柔らかい心には大きな影響を与える」

 恩師は、退職後は小学校前に家を構え、子供たちの声を聞くのを楽しみに生きた。「先生は平凡に生き、平凡に亡くなった。でも、その平凡の中にこそ教育の原点があったと思う」

 広島の風土を描くことも目的で、実際の家や教室で撮影、少年時代の良人役をはじめ地元の子供たちも多数出演している。「広島の特質がにじみでるような映画にしたかった」

 最後の作品とされるが、もう一本「宿題」がある。原爆投下の瞬間に何が起きたかを克明に描く「ヒロシマ」だ。脚本は完成しているが、製作費が集まらない。「僕が死んでも、若い人にやってもらいたい」

PR情報

この記事の関連情報

このページのトップに戻る