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ナチ・ドイツ「悪魔の作戦」 映画「ヒトラーの贋札」

2008年01月07日15時01分

 ユダヤ人を利用したナチ・ドイツの大規模な偽札作戦「ベルンハルト作戦」を描いたドイツ・オーストリア合作映画「ヒトラーの贋札(にせさつ)」(ステファン・ルツォビッキー監督)が19日に公開される。重いテーマをドラマチックに仕立て、観客を引き込む。原作の著者で、作戦の生き証人のアドルフ・ブルガーさん(90)は「まさに悪魔の作戦だった」と語る。

写真アドルフ・ブルガーさん=東京・有楽町で

■囚人たちの極限心理描く

 作戦をナチの側からではなく、作業に従った収容所の囚人の視点で描いた作品は珍しい。悲惨な収容所で、極秘作戦という特殊な状況に置かれた囚人たちの極限の心理描写は、昨年のベルリン映画祭が評価し、ドイツ・アカデミー賞で主要7部門の候補になった。

 ブルガーさんは1917年、スロバキア生まれ。14歳で印刷工の見習いになった。「このことが、私の人生を変えた」と言う。

 始まりは、洗礼証明書の偽造だった。スロバキアでは38年以前にカトリックの洗礼を受けた証明があれば、ユダヤ人でもアーリア人とみなされた。「たくさんの人が助かると聞き、引き受けた」。やがて秘密警察に知られ、妻と共に収容所送りに。妻はアウシュビッツで殺された。

 が、印刷工と知れるや、ベルリン近郊の収容所に移される。ナチが偽札造り要員を探していたのだ。収容所というと「死」のイメージだが、偽札作戦の工場は違った。音楽が流れる作業場。白いシーツ。温かい食事。たばこ。卓球台まであった。「まさにバカンスだった」

 ただ、最高機密を知った囚人が生きて解放されるわけがない。「いずれにせよ、自分は死んだも同然だ。バカンスと言っても死人のバカンスだった。恐怖など、もう感じなかった」

 戦争終結の直前、何度目かの幸運が訪れる。収容所に連合軍が迫ってナチが敗走、解放が成ったのだ。

 60年代に「ホロコーストはなかった」という言説が広がり、ブルガーさんは「事実が葬り去られる」と危機感を抱いた。それが収容所の現実と偽札作戦を明かす、96年以降の自著の出版につながった。

 「大切なのは何があったかを忘れず、ナチのような思想にくみしないこと。あれは悪魔の思想なのです」。今もドイツの学校を訪れ、体験を語り続ける。

 上映は東京・日比谷のシャンテシネなどで。各地で順次。

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