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国と心の分裂、重ねる 映画「ラスト、コーション」

2008年01月23日15時33分

 日中戦争下の上海で、抗日スパイとして活躍した女性を描く「ラスト、コーション」が2月2日、東京・日比谷のシャンテシネなどで公開される。昨年のベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した作品。アン・リー監督は「ファム・ファタル(運命の女性)の引き裂かれた情欲を通して、ゆがんだ時代と人間像を映した」と語る。

 ヒロインは上海の大学生ワン・チアチー(タン・ウェイ)。42年、親日政権を樹立した汪精衛(汪兆銘)配下の特務担当イー(トニー・レオン)を殺すため、貿易商の夫人に化け、イーの愛人になる。

 組織の上層部は、奪われた武器の行方を突き止めるまでは、と殺害を引きとめる。ワンは暴力的なセックスを迫られるうち、性愛に目覚める。イーの孤独にも心を寄せるようになり、任務と愛の板挟みになる。

 「内戦で分裂する国と、1組の男女それぞれの分裂する心を重ねた。言葉にならない虚々実々を、喜びと憎悪の間で苦悶(くもん)する性愛場面に象徴させた」と言う。

 撮影にあたり、1940年代ハリウッドのフィルムノワールを意識した。ベティ・デイビス主演「月光の女」、オットー・プレミンジャー監督「ローラ殺人事件」を挙げて言う。

 「魅力と恐怖が同居する女が、男を狂わせ堕落させる。そんな魔性の女を、今によみがえらせたかった。昔のノワールは影を多用したが、自分はカメラの焦点や色遣いを工夫してあやしさを出した」とも。

 蒋介石と汪精衛が対立し、スパイが暗闘した時代を今、なぜ?

 「私が生まれ育った台湾では、触れてはいけない時代になっていた。だが、東洋と西洋の文化が交わった上海で生まれた独特の風景やファッション、物語が政治の神秘を増幅させ、魅力的に映った」

 タイトルは「色」と「戒」の意味。男同士の性愛を描き、06年の米アカデミー監督賞を受けた「ブロークバック・マウンテン」とこの作品は、ともに「不可能な愛を求める」姉妹作という。

 「『ブロークバック〜』は、失楽園に戻りたい男たちの愛に満ちた天国編。『ラスト〜』は、男女の愛の汚さも描く地獄編」

 米国で活躍する一方で、台湾や中国を舞台にした映画も撮り続けるという。

 「ハリウッドで感性や資金面での栄養を得て、中国語で撮る映画をリッチにする。中国の文化を温め直して発見したものを、今度はハリウッドで生かす。その繰り返しの中で成長したい」

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