現在位置:asahi.com>文化・芸能>芸能>映画> 記事

日本映画、東宝が圧勝 07年興行収入の上位10本を独占

2008年02月01日11時26分

 日本映画で、東宝の強さが際だっている。31日に日本映画製作者連盟が発表した全国映画概況の、チケットの総売り上げを意味する「興行収入」から、07年に公開された映画の「人気ベスト10」をまとめると、10本とも東宝が製作に加わったか、配給をした作品なのだ。

■ドラマ映画化しヒットに

 連盟の発表では、松竹作品の「武士の一分(いちぶん)」が5位(41.1億円)に入っていたが、この映画は06年12月から正月映画として公開されたもの。純粋な07年公開作品に絞ると、東宝の完勝という、異例の事態が浮かび上がる。東宝ひとり勝ちの図式は、どのように生まれたのだろうか。

 まず、これは東宝ひとりだけの勝利ではない。

 実は、10本の大半が、テレビ局が主体になって製作したものだ。例えば「HERO」「西遊記」「アンフェア the movie」は、フジテレビや同系列の関西テレビの人気ドラマの映画化だ。「どろろ」「恋空」はTBS。05年のヒット作の続編「ALWAYS 続・三丁目の夕日」は日本テレビで、「マリと子犬の物語」は日テレとの「共同幹事」だ。全体では26本中13本がテレビ局主体となっている。

 3大映画会社の、ほか2社と比べると、東映作品は昨年16本だがテレビ局主体で製作した作品はゼロ。松竹も27本のうち3本だけ。東宝の強さは、テレビ局主導の企画をたくさんとれたこと、特に高視聴率だったり、ドラマ制作に実績のあったりするフジ、日テレ、TBSと組めたことが大きいのだ。

 ではなぜ、テレビ局が主体になった映画はヒットに恵まれるのか。

 例えば「HERO」。視聴率が高く、広く知られている。そのうえ、テレビ流の「援護射撃」が効いている。映画の公開前には再放送を流し、バラエティー・情報番組で映画を取り上げる。映画館で行った観客アンケートでも「見ることを決めた情報」に、6割超の人がテレビをあげていた。

 テレビ局は、ドラマやバラエティーの制作を通じてプロダクションとつながりが深く、人気タレントの映画起用も実現しやすい。

 では東宝が強力なテレビ局の企画を取れる理由は?

 東宝は30年以上前に、自前で製作する映画を「ゴジラ」などに絞り、代わりに外部プロダクションや出版社、テレビ局の製作した映画に着目した。そこで、企画を集める映画調整部を置いた。製作ではなく、他社の企画を巧みに集める「調整力」に力を入れたのだ。あるテレビ局の幹部は「いい企画があれば、まず東宝に持ち込むのは今や業界の常識」と話す。

 映画調整部の現部長・市川南さんは「ヒットしそうな企画は何でも受け入れる柔軟さが売り物」と言う。「長年積み重ねた人脈やノウハウが、生きている」

 テレビ局の方は、なぜ東宝を選ぶのだろうか?

 例えばTBSが東宝と組んだ新垣結衣主演の「恋空」は、予想を超える大ヒットとなった。原作の知名度は高い。だが他に、(1)企画を持ち込んでから約10カ月の短期間で公開にこぎ着けた素早い対応(2)学生の前売入場料を1000円に下げた(3)中学・高校生をターゲットにした宣伝戦略――という3点で東宝の力が効いた、とTBSなどはみる。

 TBS映画事業部長の濱名一哉さんは「東宝は、我々の意図を的確・迅速につかんでくれ、映画館への発言力も強い。『恋空』では作品の力を最大限に引き出してくれた」。今年も6本を東宝と組む。

 ちなみに、東宝が自ら主体となって製作した07年の映画は5本。大きなヒットは少なく、「Life 天国で君に逢えたら」の17億円が最高だった。東映は9本、松竹も9本を主体となって製作している。

■映画文化、衰退する恐れも

 映画業界紙「文化通信ジャーナル」の指田洋編集長の話 テレビドラマの延長のような企画ばかりが映画になって、それでいいのだろうかという思いはある。他の2社も東宝のように、自前の映画製作に力をあまり注がなくなると、日本の映画文化の衰退につながりかねない。

PR情報

このページのトップに戻る