現在位置:asahi.com>文化・芸能>芸能>映画> 記事

パレスチナ、銀幕に続々 ジャーナリストが手がける

2008年02月09日11時34分

 長年、パレスチナとかかわってきたジャーナリストが相次いでドキュメンタリー映画を手がけている。報道写真家の広河隆一さんは「パレスチナ1948 NAKBA(ナクバ)」を3月に公開するほか、ビデオジャーナリストの土井敏邦さんも「占領」をテーマに長編を製作中だ。それぞれパレスチナとのかかわり方の違いが映画に表れている。

■「大惨事」の思考 根源問う

 5月に48年の第1次中東戦争から60年を迎える。イスラエルが独立し、パレスチナ人が難民化した。パレスチナ人はそれを「ナクバ(大惨事)」と呼ぶ。

 広河さんの映画は67年に研修生として暮らしたイスラエルのキブツを再訪する場面から始まる。「キブツの生活は自由で平等ですばらしかった」。しかし、キブツのはずれにある「白い廃虚」が、破壊されたアラブ人の村であることを知って、衝撃を受ける。

 村を追われたアラブ人(パレスチナ人)を探し出し、ナクバについて証言を得る物語が柱になる。さらにデイル・ヤシンなどユダヤ人武装組織による虐殺があったアラブの村も訪ねる。

 もう一つの柱は、広河さんが82年に撮影したレバノンのパレスチナ難民キャンプ虐殺事件の映像と、その犠牲者の家族を追う作業だ。虐殺はレバノンに侵攻したイスラエル軍が地元右派民兵をキャンプに入れたために起こった。広河さんは「48年のナクバと、82年の虐殺はイスラエルがパレスチナ人を脅威とみなし排除する行動として連続している」と結論づける。

 「ナクバの思考は、イスラエルによる入植地拡大や分離壁の建設などいまも続いている。占領が終わり、パレスチナが独立しても問題は解決しない。48年に立ち返ってユダヤ人がナクバの意味を理解し、終わらせることで初めて共存の可能性が出てくる」。そんな主張に貫かれている。

 広河さんが撮ったビデオは千時間以上あった。構成・編集を担当した安岡卓治さんは、「ジャーナリストとして背負った問いを突き詰める迫力に圧倒された。歴史の説明は出来るだけはぶき、広河さんとパレスチナとのかかわりを描いた『人生ロードムービー』になった」と語る。

■「占領の今」に踏み込む

 紛争の根源を問う広河さんに対し、土井さんはイスラエルによる占領の実態に踏み込み、四つの長編ドキュメンタリーシリーズ「届かぬ声――占領と生きる人びと」を製作する。編集中の第3部「自爆と侵攻」は、自爆したパレスチナ人青年の遺書や家族の証言と、テロで大けがをしたイスラエル人女性の闘病を組み合わせることで、紛争を重層的に見せる。

 土井さんはテレビの報道番組を中心に発表してきた。取材はパレスチナ人の家に長期間住み込んで撮影する。しかし、放映されるのは長くても10分程度だ。「映画ではパレスチナ問題の構造を見せ、人々の言葉をじっくりと聞かせたい」と語る。

 広河さんと土井さんの映像には、30年、40年とパレスチナとつきあってきた厚みと深さがある。欧米人ジャーナリストなら警戒される場面でも日本人なら受け入れられるアラブ世界の親日性も味方している。

■女性の日常切り取る

 2人に先駆けて報道写真家の古居みずえさんの「ガーダ パレスチナの詩」が06年に公開され、昨秋DVD化された。

 ガーダという一人の女性の結婚、出産などを追う。台所での夫婦の会話や、居間での女性たちのおしゃべりなど、男性では立ち入れない日常生活を内側から切り取った場面が心に残る。

 古居さんは30代後半で病気になって会社勤めをやめたのを機に写真家になった。いまも難病を抱え、薬を飲みながら、パレスチナに通う。

 「パレスチナ人には自分が困っているのに人を助けようとする温かさがある。一緒にいると、こちらが励まされる。かわいそうな難民、あるいはいつも戦っている戦士といった類型化されたイメージではなく、私たち以上に人間らしい彼らの生き方を見せたかった」と語っている。

PR情報

このページのトップに戻る