現在位置:asahi.com>文化・芸能>芸能>映画> 記事 社会性光る「権力の不正」暴く2作 ベルリン映画祭2008年02月19日11時43分 58回目のベルリン国際映画祭が17日(日本時間18日)閉幕した。コンペ部門で最高賞(金熊賞)の本命とみられたポール・トーマス・アンダーソン監督の「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」は監督賞と音楽賞。金熊賞はブラジル社会の矛盾を問うた「エリート・スクワッド」(ジョゼ・パジーリャ監督)がつかんだ。審査員賞を米軍の残虐行為を扱った記録映画が獲得し、社会性・政治性の強い映画が注目を集めた。 石油採掘に心奪われた男を描く「ゼア・ウィル・ビー〜」は地元誌などの評価ランキングで軒並みトップだったが、最高賞は成らず。授賞式のアンダーソン監督は、監督・音楽2賞の像を掲げながら、表情はなにか複雑そうだった。 金熊賞の「エリート・スクワッド」は、麻薬組織撲滅のためなら拷問やリンチにも手を染める、特別警察の矛盾と腐敗を描く。実話を下敷きに、記録映画風の撮影で、現実味たっぷりの画面を作ってみせた。 パジーリャ監督は「僕の前作(『バス174』)はドキュメンタリー。今回はフィクションだが、リアルなものを浮き立たせた。記録映画の経験を十分に生かせた」と語った。 審査員賞の「S.O.P.」は、米軍のイラク囚人虐待の生々しい現実をインタビューと写真で暴く記録映画。監督のエロール・モリスは前作「フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白」で米アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受けた。「責任は1人にあるのではなく、地位ある人たちが根本的に間違っていた。そこを分かって欲しい」とモリス監督。 「権力の不正」をテーマにしたこの2本は、社会派の審査委員長、コスタ・ガブラス監督の共感を得たのかもしれない。 男優賞は1週間後の米アカデミー賞でも最有力視されるダニエル・デイ・ルイスが外れ、イランの「ザ・ソング・オブ・スパローズ」のレザ・ナージに。家族のために、都会のバイクタクシーで稼ぐ父親役。「親と子」というテーマも目立ったコンペ出品作の中で、出色の演技だった。 4度目のコンペ挑戦だった山田洋次監督「母べえ」は評価ランキングで上位だった。批評にも「映画のただ一つの場面が観客の心を晴れやかなものにすることはしばしばある。『母べえ』にも魔法のような瞬間があった」など、好意的なものがあったが落選した。 日本映画の良いニュースは、熊坂出監督「パークアンドラブホテル」が長編1作目の監督作を対象にした、いわゆる「新人賞」を受けたこと。32歳が届けた新風は「美しい映像。何が起こるかわからない脚本」などが評価された。 「パーク〜」は実験的な映画が集まるフォーラム部門の出品作だが、やはりこの部門に参加した、若松孝二監督「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」も最優秀アジア映画賞など二つを受賞。受賞後の上映会は満員で、終了後は熱心な質疑が71歳の監督と観客らの間で交わされた。新星の出現とベテランの健在。日本映画界にとっては、その二つが終幕で光彩を放った。 PR情報この記事の関連情報文化・芸能
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