現在位置:asahi.com>文化・芸能>芸能>映画> 記事 冷血漢演じてオスカー 「ノーカントリー」ハビエル・バルデム2008年03月17日14時39分 私憤や遺恨、愛情のもつれでもない。ただ殺すために殺す冷血漢が、大金を奪った男を追いつめる。米国映画「ノーカントリー」(コーエン兄弟監督)が各地で公開中だ。今年の米アカデミー賞で4冠。猟奇的な殺人者を演じ、同賞の助演男優賞を受けたハビエル・バルデムが来日した。「暴力の背後にある哲学的な広がりを演じたかった」と話す。 荒涼としたテキサスの大地で狩りをしていた男が、死体の数々を見つける。麻薬取引をめぐる抗争らしい。男は死体の脇にあった大金を持ち逃げする。 モーテルを転々として逃げ回るこの男を、ハビエル演じるアントン・シガーが追跡する。その途上、無関係の人間も委細かまわず殺す。武器はボンベをつけたエアガンだ。 「意味も動機も欠いた暴力は恐ろしい。不可解、不条理なシガーは、現代社会を象徴する」と話す。 「社会は、生身の人間の意思や欲望で動くものだが、今や経済が支配する。時代が向かう方向も、意味や動機も見えてこない」。無軌道なシガーの姿を経済という名の暴力に重ねる。 逃げる男はベトナム帰還兵という設定。うっ屈した日常、屈折した心情が、あえて劇的事件を求めたとはいえないか――。 バルデムの解釈は「逃げる男は、世の中を修復する道具として、暴力を呼び込んだ」。そこで母国スペインを例にとる。「フランコ独裁政権下の傷が、左右両派に市民の代弁者の立場を競わせ、攻撃の応酬になった」。過去への嘆き。それを原題「ノー・カントリー・フォー・オールド・メン」が象徴するのだという。 劇中のおかっぱ頭が、シガーという男を怪異に見せる。ヒントは、彼を追う初老の保安官役トミー・リー・ジョーンズが持ち込んだ80年代のスナップ写真。そこに映った男の髪形を、コーエン兄弟が気に入った。 近年、繊細な感情を好演して評価を高めるバルデム。例えば、体がまひして生死の間でもだえる「海を飛ぶ夢」。圧政下のキューバで迫害される同性愛の作家を演じた「夜になるまえに」。この2本でベネチア映画祭の男優賞を受けた。 「心や体に傷を負っていない人間などいない。心の平衡を保てるかどうかの境界に立ち、悩みに打ち勝っていく人間の姿に興味がある。平穏に見える日常や自分を、見つめ直す気持ち。それを観客と共有したい」 PR情報この記事の関連情報文化・芸能
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