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「意外な」感性に栄光 カンヌ映画祭報告(上)

2008年05月27日11時44分

 閉幕した第61回カンヌ映画祭は、開幕当初から作品が低調だと海外メディアは報じた。だが暗く悲しく地味な作品にも個性の輝きがあり、評価は大きく割れた。「多様な映画、新しい才能たちの実験と意外性の場にしたい」という総代表ティエリー・フレモー氏の狙いであり、未来に向けての足がかりの年になった。

写真出演した生徒役たちと会見する「クラス」のローラン・カンテ監督(手前中央)
写真「クラス」から

 「無名を楽しむ映画祭」。英映画誌「スクリーン」は開幕初号で、コンペティション作品に皮肉を込めた。

 最高賞はローラン・カンテ監督「クラス」。学級崩壊寸前のフランスの高校を舞台に、人種の違う生徒同士の摩擦、教師の暴言に傷つく女子、暴行をふるって転校させられる男子……。劇的要素のない教室内を撮り続けた作品だけに、受賞には驚きの声があがった。が、審査員のジャンヌ・バリバールは「最も残酷な映画だった」と力を認めた。

 「映画を政治的なメッセージ性で判断しない。政治は生活をよくするもので、芸術とは関係ない」。審査員長のショーン・ペンは開幕時に語ったが、実際、映画と政治、社会のありようは切り離せない。

 第2席のグランプリ受賞作「ゴモラ」は夢のない人生に嫌気がさし、ナポリの犯罪組織にのみ込まれる若者の破滅を描くマッテオ・ガローネ監督の作品。フランスのテレビ記者ディディエ・アローシュさんは「思春期の揺れる視線がマフィア映画では新しく今年の数少ない収穫だった」。

 パオロ・ソレンティーノ監督「イル・ディーボ」は、政財界や闇組織に隠然たる力を持った元首相ジュリオ・アンドレオッチの公私両面を映し、審査員賞。狂乱の宴会や教会内の荘厳な光景を鮮やかに対比するカメラワークが異彩を放った。「過去の政治や社会への疑いを晴らさないと視界がクリアにならない」(ソレンティーノ監督)という問題意識を、この2人の30代の新進に共通して感じる。

大作は「不発」

 話題の大作は「不発」に終わった。スティーブン・ソダーバーグ監督「チェ」は、革命家チェ・ゲバラの生涯を映した大作だが「ノー・エボリューション(進化)イン・レボリューション(革命)」と米映画誌に揶揄(やゆ)された。英紙「ガーディアン」には「ゲバラとカストロの別れの場面に光を当てなかった」と書かれたが主演ベニチオ・デル・トロの男優賞で面目を保った。

 特別賞を受けたクリント・イーストウッド監督「エクスチェンジ」は、息子を猟奇犯罪者に誘拐される母の悲嘆を描く。「いつの時代でも、語らなくてはならないことがある」という監督は、狂気より愛を主題に選び、「卑劣や醜悪、不正を、あえて引き出さなかった」(ニューヨーク・タイムズ)抑制が、逆にいま一歩話題性を欠いた理由か。

 伊勢谷友介、木村佳乃が出演した「ブラインドネス」は受賞を逃したが、日本、カナダ、ブラジル合作のスケールの大きな作品の中で堂々と英語で演じる姿は、「バベル」の菊地凛子の発展系に映る。

 対照的なのは「ある視点」部門で審査員賞を受けた「トウキョウソナタ」の黒沢清監督。「日本の片隅で撮っていても、世界に通じるものはできる」と語り、新たな可能性を示した。(カンヌ=宮崎陽介)

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