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〈回顧2007:6〉音楽・クラシック 古典の重み伝える試み、オペラ界に「ばら戦争」

2007年12月29日10時44分

 「クラシックブーム」という言葉をよく耳にする。一流の演奏が安価に聴ける音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」は3年目を迎え、入場者が100万人を超えた。オペラ中継を映画館などで見せるメトロポリタン歌劇場の「ライブ・ビューイング」も観客を集めた。「神童」「ピアノの森」など、映画でもクラシックを扱った作品が続いた。

 とはいえ、時代を超えた古典という存在は、目先の話題を追うブームとは本来なじまないはず。重みや厚みを伝えずしてどうする、と発奮したアーティストの頑固な活動が光った。

 ●聴衆と育つ楽団

 山形交響楽団は、常任の飯森範親のリードでブルックナーの交響曲「ロマンティック」を好演。咀嚼(そしゃく)しにくい曲にどんどん挑み、地元の聴衆と一緒に育とうとする気概は貴重だ。

 30年ぶりに日本でリサイタルを開いたピアニストのペーター・レーゼルは、古典の多様さに目を開かせてくれた。古典の演奏こそが創造的な芸術活動なのだと、ごつごつした職人のような10本の指で雄弁に語った。

 ライフワークのドビュッシーで25年ぶりのリサイタルを開いたのは、ピアニストの遠山慶子。今年亡くなったテノールのヘフリガーら、数多くの大家をサポートしてきた人の手が紡ぐ音楽には、華やかな楽壇の片隅でひそやかに咲き続ける小さい花のような味わいがあった。

 全314曲を5年がかりで紹介した「ヴォルフ歌曲全曲演奏会」も完結。ピアニストの松川儒(まなぶ)が13人の歌手とともに、後期ロマン派の異才のつぶやきを粋なストーリーに仕立てた。演奏家と聴衆が一緒に未知の音の世界を「発見」してゆく。地味だがこれほどぜいたくで幸せな演奏会には、なかなか巡りあえなくなってしまった。

 一方、伝統の重みに切り込んだのは、75年生まれのダニエル・ハーディング。老舗(しにせ)のロンドン交響楽団を伴って来日。刀一本で老獪(ろうかい)なベテランたちに切りこむ若武者の風情でスリリングに音を紡いだ。

 伝統の継承を実感させる交代劇も。新国立劇場が本場ウィーンから招いたトーマス・ノボラツスキー芸術監督が退任、若杉弘が引き継いだ。

 読売日本交響楽団の常任指揮者、ゲルト・アルブレヒトも去った。若手作曲家への委嘱や、三島由紀夫原作・ヘンツェ作曲のオペラ「午後の曳航(えいこう)」世界初演などで楽壇に喝を入れる存在だった。後任はスタニスラフ・スクロバチェフスキ。

 神奈川フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督には、ドイツの重鎮ハンス・マルティン・シュナイトが就任した。

 アルブレヒト72歳、スクロバチェフスキ84歳、シュナイト77歳。経験を重ねた名匠たちの薫陶を仰げる日本のオーケストラは果報だ。

 ●同一演目相次ぐ

 一方オペラは、ブームに乗って一流どころの来日ラッシュとなった。中でもリヒャルト・シュトラウスの傑作「ばらの騎士」を新国立劇場、チューリヒ歌劇場、ドレスデン国立歌劇場が相次いで上演、「ばら戦争」と呼ばれた。

 初演の地ドレスデンの歌劇場を筆頭に、いずれも出色の舞台。とはいえ、オペラのチケットは時に5万円を超える。聴き比べに奔走する観客の傍らで、同じ演目が集中する状況を冷ややかにみるファンも少なくなかった。この格差をどう縮めるか、業界で考えていく時期に来ている。

 開場10年を迎えた新国立劇場は、めったに聴けないプッチーニ「西部の娘」を上演した。演出のアンドレアス・ホモキが前作「フィガロの結婚」同様、大量の段ボールで舞台を構成、人物の心の動きをシンプルに描き出した。指揮のウルフ・シルマーとホモキのコンビは、同劇場の宝と言っていい。

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