現在位置:asahi.com>文化・芸能>芸能>音楽> 記事 〈回顧2007:7〉音楽・ポピュラー 「シングルは配信」定着、過去の歌から明日探る2007年12月30日11時02分 音楽の嗜好(しこう)が拡散するなか、思わず口ずさみたくなるメロディーへの回帰志向が感じられた。 春先に植木等が、夏には阿久悠が亡くなった。彼らが送り出した歌は60〜70年代、テレビの電波に乗り、世代を超えて口ずさまれた。 しかし今、テレビを見ているだけで「はやりうた」は聞こえてこない。25周年を迎えたCDも絶対の指標と言えなくなった。日本レコード協会によると、9月までのシングル盤の売り上げが約5000万枚。対して、ケータイとネットを併せた配信シングル曲数は1億。金額では350億円と270億円。「シングルは配信で」という習慣は若者を中心に定着した。 だから今年の代表曲を問われたとき、ある人は、紅白歌合戦を機にCDがミリオンセラーとなった「千の風になって」をあげ、またある人は「着うたフル」で百万ダウンロードされたGReeeeNの「愛唄」をあげるだろう。 海外では大物の脱大手レコード会社の動きが相次いだ。マドンナは米大手興行会社へ移籍、レディオヘッドは新作の販売をネット配信で始め、値付けは購入者の意思に任せた。英国ではプリンスが新作約300万枚を新聞のおまけとして配布した結果、CDは発売中止になった。 ●90年代さえ懐古 拡散が進むほど、いにしえの確かなものを懐かしむ風潮も生まれる。服部良一、筒美京平のトリビュート盤が人気を博し、皆が知るヒットがないと嘆かれた90年代さえ懐古の対象となった。ドラマとのタイアップで生まれたメガヒット曲を集めた「R35」が60万枚のヒット。フリッパーズ・ギターら「渋谷系」への回顧がなされ、急逝した坂井泉水のZARDのベスト盤がチャート上位をにぎわした。 90年代の曲はベテラン勢のカバーアルバムにも収められた。徳永英明が女性ボーカル曲を歌った「ボーカリスト」の最新盤には70〜80年代の曲に交じり、安室奈美恵の「CAN YOU CELEBRATE?」が入っている。河村隆一、山崎まさよし、中森明菜らも自らの歌声で、過去の名曲に新たな魅力を吹き込んだ。 こうした動きを単に懐古主義とは言い切れまい。現代の曲が世代を超えられないからこそ、過去の曲を歌い継ぐことで時代を超えて異なる世代を結びつけようとする。それはポピュラーソングの役割ではないか。 ●メロディー復権 一方、若手は過去を取り込むことで、いまの自分を表現しようと闘っている。日本でも人気の20代の洋楽アーティストからは、そんな意思が感じられた。リズム重視が進んだ黒人音楽にメロディーの復権をもたらしたニーヨ。アリシア・キーズ、ジョス・ストーン、エイミー・ワインハウスら女性歌手は、自らが生まれた時代の音楽の強烈な香りをまとった新作を出した。 日本ではさしずめパフュームか。前世紀の近未来像を思わす装いの女性3人組アイドル。テクノの反復ビートに乗ったメロディーからは、思わず口ずさみたくなるポップな歌詞が浮かび上がる。過去を参照しながらも現代的な感覚はCMに使われた「ポリリズム」に表れている。 懐古でなく、反復しつつ次へと進む回帰志向。典型は10年選手の、くるりだった。 「ロックはどこまで豊かになれるか」「豊かになったメロディーにどう日本語を乗せるのか」。60〜70年代のロックが抱えていた問題を、10年間独りで反復しているかのようにみえる2人組。新作「ワルツを踊れ」のテーマはクラシックだった。とはいえ、聴き手を路頭に迷わせることはしない。邦画の佳作「天然コケッコー」の世界をエンドロールで支えた「言葉はさんかく こころは四角」は、口ずさめる歌の王道といえる名曲になっている。 PR情報この記事の関連情報
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