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〈公立音楽ホールどこへ:上〉「びわ湖の衝撃」オペラ襲う

2008年04月23日12時14分

 「びわ湖ショック」といえる衝撃が3月、クラシック音楽界を襲った。

写真びわ湖ホールのロビーは、ガラス越しに琵琶湖が望める

 オペラハウスの「西の横綱」、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールで、県の支出金が08年度から1割カットされることになった。そのうえ福祉医療費の穴埋めに、半年間の休館や、民間も含めた運営者の公募まで検討されているらしい……という憶測が広がった。県予算をめぐる一部の報道がきっかけだった。

 びわ湖ホールは演目の選定から舞台装置の調達、歌手選びまで、オペラを自主制作する。ここまでを毎年やるのは、他には東京の新国立劇場、兵庫県立芸術文化センターくらい。演目の質の高さも定評がある。もし民間管理になれば、1本で億単位の費用がかかる自主制作は縮小・廃止され、採算が見込めるホールのレンタルが劇場運営の中心になりかねない。そうなれば創造拠点の機能が失われてしまうのではないか――。

 音楽愛好家の反応は早かった。「応援する会」が結成され、3週間で3万人近い署名を集めて知事と県議会議長に届けた。署名した人の67%は県外から。また、日本オペラ連盟、日本オーケストラ連盟など5団体が創造活動継続の要望書を知事に提出した。

 県議会で先の報道が否定され、騒ぎは一段落した。だが建設に332億円を投じたホールは、約15億円の年間運営費の3分の2を、県が支出する指定管理料に頼る。県の財政次第ではオペラの自主制作も危うい。その火種は、今もくすぶる。

 公立音楽ホールの運営が揺れた事例は、近年いくつもある。例えば04年に開いた長野県松本市の「まつもと市民芸術館」。小澤征爾さんが指揮するサイトウ・キネン・フェスティバル松本でオペラを上演する会場だ。

 ここは建設自体を巡って地元に反対運動が起こり、開館間際の市長選で最大の争点となった。総工費145億円でメーンホールが4面舞台を備えた1800席。運営費や建設費の返済で年12億円の税負担が、人口23万人の街にのしかかる。

 オペラの殿堂を目指す新国立劇場が97年に開館し、その前後で本格的なオペラ上演に対応できる劇場が各地にできた。こうしたホールの連絡組織「多面・大規模舞台劇場協議会」には8館が加盟。100億円単位の建設費、年間運営費の大半が自治体負担という構図は、他でも見られる。

 びわ湖ホールはベルディ作品の日本初演など玄人好みのオペラ制作で差別化を狙い、全国のファンの耳目を集める存在になった。半面、「その路線がオペラになじみが薄い地域住民と、劇場の距離を広げた」(他県ホール職員)という見方がある。

 びわ湖ホールの井上建夫館長は「当初の路線は、知名度を上げるために必要な戦略だった。今回の騒動もきっかけにして、地域との結びつきをさらに強めたい」と語る。

 音楽ホールに行政がどうかかわるか。それは「福祉か文化か」のような二者択一ではないはずだ。優れたオペラを制作して内外から注目され、演目や演出で舞台芸術の水準を引き上げれば、街のPRになり、人材も集まる。ただ、運営する側は、鑑賞に訪れない大多数の納税者にも、存在意義を納得してもらえる言葉を示さねばならない。

 東京大学の小林真理准教授(文化政策学)は「運営側が『オペラは素晴らしい』と当たり前の説明をしても、税金を注いで支える意義は伝わらない。『精神的に豊かな生活づくりも福祉なのだ』といった、社会の実情に応じた議論が必要」と話す。欧州では歌劇場再建のためビールに臨時の税をかけた例もあるそうで、「ファンたちも署名運動のネットワークを生かし、場合によっては身銭を切って支える発想を持つべきでは」と提案する。

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 びわ湖ホールの予算削減の騒動を機に、公立音楽ホールの課題と展望を探る。(この連載は谷辺晃子、星野学、吉田純子が担当します)

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