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徐々にクセになる不愉快さ CD「ストレス」

2008年04月23日11時34分

 「癒やし系」と相場が決まっているクラシックのコンピレーション(寄せ集め)CDに、「ストレス」なるタイトルの1枚が登場した。蛭子能収が描くジャケットのインパクトもあってか、約5千枚と健闘している。

 全17曲、確かに1曲として落ち着いて聴いていられない。冒頭からキコキコとバイオリンの高音が耳をつく米国の前衛作曲家ジョージ・クラムの「ブラック・エンジェルズ」。歯医者で虫歯をいじられている気分になってくる。

 が、その不愉快な感じが徐々にクセになる。リゲティの「ムジカ・リチェルカータ」はピアノが同じ音を様々なリズムパターンで連打するだけ。打楽器の強烈な後うちに追い立てられるショスタコービチの交響曲第10番に、運動会を思い出して駆け出しそうになるカバレフスキーの「道化師/ギャロップ」。音楽様式の博覧会といった風情だ。

 企画したエイベックス・クラシックスの中島浩之プロデューサーは「癒やし系のCDばかりつくっていて、ちょっと欲求不満だった」と語る。

 「妙に気に障ったり、異様に血が騒いだり。こういう音楽にこそクラシックの醍醐味(だいごみ)があると思うが、業界では売れないとされる。『ストレス』という意表を突くタイトルなら、怖いもの見たさで手をのばした人が『意外にカッコいいじゃん』と目を開いてくれるかも、と考えた」

 ファン開拓には癒やし系――。カラヤン指揮のムーディーなナンバーを集めた89年のCD「アダージョ・カラヤン」が爆発的に売れて以来、クラシック業界はこの呪縛から抜け出せない。結果として耳に快いごく一部の曲を「これぞクラシック!」と聴衆に強(し)い、楽しみの枠を狭めてきたとも言えないだろうか。

 思えば、ドラマ「結婚できない男」では主人公の阿部寛がショスタコービチの交響曲を大音響で聴き、「のだめカンタービレ」でもストラビンスキーがごく普通に流れた。「ストレス」などと自虐的にならずとも、多彩な楽曲を受け入れる感性の土壌は十分に育っているんじゃないか。思いのほか楽しい「ストレス」CDに、そんなことを考えさせられた。(吉田純子)

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