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懐かしや「ネーポン」飲み納め 半世紀の歴史に幕 神戸

2007年02月24日

 かつて関西の下町で広く親しまれたオレンジ味の清涼飲料「ネーポン」などを製造しているツルヤ食料品研究所(神戸市兵庫区)が、2月末で半世紀の歴史に幕を下ろす。再利用を繰り返した古い瓶を使い、外見、味ともに昭和の時代を感じさせる同社の製品は、静かな支持を受けてきた。近年は、上田安子さん(68)が一人でつくっていたが、体力的に潮時と判断した。

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レトロな味と瓶が人気のツルヤ食料品研究所の飲料。奥は上田安子さん=神戸市兵庫区で

 JR神戸駅近くにある同社をのぞくと、上田さんが瓶のケースに囲まれた作業場で、名古屋から来た大学生(27)と話していた。インターネットでツルヤの製品を知って個性にひかれ、上田さんに会いに来たという。

 主力のネーポンは、90年代前半に故中島らもさんのエッセーやテレビ番組で取り上げられ、時代遅れな感じから「幻のジュース」と注目された。昨年、廃業の話がネットなどで広まると、全国からファンが訪れるようになった。

 ネーポンのほかにも、派手に着色したソーダや、手づくりしたぜんざいや甘酒を売っている。

 製品に、現代社会が失ったおおらかさがあることも、人気の理由のようだ。例えば、一部のネーポンの瓶には「ミス・パレード」のロゴがある。昔あった商品の名前だ。別の業者名が刻まれた瓶も。「もったいないから」空き瓶の回収を重ね、54年の創業以来ずっと使っているものもあるという。

 そんな「いい加減」が受けてはいても、同社の製品への思いはいたってまじめだ。60年代前半に生まれたネーポンは、無果汁の清涼飲料を健康的なものにしようと、ネーブルやポンカンの果汁を加えたものだ。甘酒は米を炊くことから始め、経験を頼りに丸2日かけてつくる。

 同社は上田さんの義父が創業。ソーダ水や瓶詰のぜんざい、ノンアルコールの甘酒などを主力商品に、大阪や神戸の喫茶店、銭湯、競艇場などに販路を広げた。大手メーカーとの競争で零細業者が相次いで倒れるなか、独特な品ぞろえで生き残った。

 80年ごろまでは家族と従業員の計約10人が働いていた。忙しいときは連日、3千本以上を生産したという。だが、95年の阪神大震災で、お得意さんの小さな喫茶店が軒並みつぶれた。翌年には、2代目で夫の裕久さんが64歳で亡くなった。

 最近、レトロな瓶が人気となって返却率が悪くなり、足りなくなってきた。新たに瓶を注文するほどの余力はなく、体もしんどくなったので、店じまいを決めた。

 後を継ぎたいという申し出もあるが、その気になれないという。「商売になる見込みがないものは任せられない。残念やけど」。上田さんのこだわりがのぞいた。

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