現在位置 : asahi.com > 文化芸能 > 文化 > 文化一般 > 記事 ここから本文エリア

他者には届きにくい声 水戸芸術館「ライフ」展

2006年08月11日11時56分

 アートとライフは縁が深い。アートのためのアートといった自己目的化しがちな表現への反省から、身近な生活や生命といった意味のライフとの結びつきが、しばしば求められた。

写真

棚田康司の木彫(手前)

写真

佐々木卓也の女性の肖像画

 だが、ライフの側もアートという場を求めているのではないか。水戸芸術館現代美術ギャラリーの「ライフ」展に出品されている13人の作品からは、少数者や個人の声なき声、他者には届きにくい声が響いてくる。

 新宿でHIV感染予防の普及活動にも取り組むハスラー・アキラは、同性愛の男性が幼児を抱く姿を映した写真を通し、命をつなぐことの意味を厳粛に問う。暴走族を追った吉永マサユキの写真は、社会の規範から逸脱した叫びの記録だ。

 競争原理が信奉され、常に自己宣伝が求められる社会で、屈折し、内向しがちな傷つきやすい「私」もまた、アートという共感の場が必要のようだ。

 日野之彦の半裸で幼児のように体を丸める青年像や、棚田康司の成長期の少年少女の傷つきやすそうな身体をした一木造りの木彫がそう。また「おそれ」や「ひねくれた」といった意味の題名をもつ川島秀明の幽玄な女性像も、漠然とした不安に対する自己確認の作業か。一見ナイーブに映るが、見開かれた強いまなざしの表現などから、生命のしたたかさやたくましさがうかがわれる。

 だが、なにより作家の生々しいライフが露出するのは、知的障害などのハンディを持った5人の作家たちの表現だろう。

 佐々木卓也が、繰り返し同じポーズで描くアイドルなどの女性像。斎藤裕一が、文字とも線とも判別しがたい線描の中に書き込んだテレビ番組の題名。今村花子が、油絵の具で即興的に混合させる色彩。舛次崇が黒を基調に描く重厚な植物などの静物。山際正巳が、陶で作る分身のような「正巳地蔵」。

 固有の対象に対する強烈な関心が、生きることと分かちがたく結びつき、絵の具や土を媒介にして、絶妙のバランスを保ちながら表出される。

 今展では、アウトサイダー・アートや生(き)の芸術といった枠に押し込められることなく、岡崎京子の漫画作品などともに、会場を多声的で豊かな空間にしている。

    ◇

10月9日まで、水戸市五軒町の水戸芸術館。9月18日、10月9日をのぞく月曜と9月19日休み。

PR情報



ここから広告です
ここから広告です
広告終わり

マイタウン(地域情報)

∧このページのトップに戻る
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。 Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.