スカッと文庫1千万部突破 佐伯泰英さん
2006年09月29日
佐伯泰英さん(64)の文庫書き下ろし時代小説が累計1000万部を突破した。8年間で88冊。56歳で時代小説に転身した「遅咲きの花」は、「いま書くのが楽しくてしかたない」と、20日に1冊の驚異的なハイペースで書き続けている。
 自著の文庫本を背にする佐伯泰英さん=東京・神田で
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佐伯さんは元写真家。70年に夫婦でスペインへ渡り、闘牛の写真を撮り続けた。74年に帰国し、闘牛の写真集やノンフィクションを発表。87年から小説も書いたが、売れなかった。
犯罪ミステリーの打ち切りが決まり、編集者から「あとは官能小説か時代小説しかないね」と告げられたのが97年ごろだった。
「まあ縁切りですよね。だけど僕は、柴田錬三郎さんや藤沢周平さんが好きだったし、時代小説、書けるんじゃないかと思った」
図書館に通い資料を読み、途中まで一気に書き上げ出版社に持ち込んだ。これが、剣の達人金杉惣三郎が活躍するデビュー作の『密命 見参!寒月霞斬(ぎ)り』(祥伝社文庫)になる。刊行まで半年ほど待たされたが、発売1週間で重版に。「読者」の存在を初めて感じた瞬間だったという。
佐伯作品の人気は書店から火がついた。読んでファンになった書店員が、レジ横や、ワゴンなど、目立つ場所に並べ始めたのだ。
現在は「鎌倉河岸捕物控(とりものびかえ)」「居眠り磐音(いわね)江戸双紙(ぞうし)」など九つのシリーズを並行して書き、年15、16冊が本になる。午前3時か4時に起きて4、5時間執筆。朝9時ごろにはひと仕事終えるという日々だ。
僕の本は読み返す本じゃない、と佐伯さんは言う。「論は立てず理屈は言わず。小説で、ひととき浮世のいやなことを忘れてもらえたらと思う。時代小説を書き始めた90年代の終わりは、男の人の居場所がどこにもない時期でしたから」
スペインでの体験も、作中人物の温かみとなって反映されている。「子供もできて、何の身分もない一家3人が、江戸の長屋の人情みたいなものがある村で生かしてもらった。闘牛士を追いかけてスペイン中巡ったことも、剣劇シーンを書く時に生きてます」
祥伝社文庫の加藤淳編集長によると、新しい本が出た日に、読者から「いつ出ますか」と電話がかかってくるそうだ。「『もう店頭に並んでますよ』というと、『そうじゃない、次はいつ出るんだ』と聞かれます」
文芸評論家の縄田一男さんは、「いまの時代小説には、佐伯作品のような『読んでスカッとする』ものが欠けていた」と人気を読み解く。「テレビでいい時代劇がない。みたされないファンが、次々出る佐伯さんのシリーズを読んで楽しんでいるのではないですか」
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