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「都市伝説」またぞろ脚光 真偽よりもつながり求め

2007年02月08日12時01分

 「耳にピアスの穴を開けると白い糸が出てきて、引っ張ると失明する」「誰もいないトイレの個室から返事をするトイレの花子さん」――。70年代後半から80年代、少年少女を中心に広がった「都市伝説」。古くさくて、うさんくさい物語は、情報化社会の現代に一見、似合わない。でも今また、20〜30代の若者を中心に、都市伝説が注目を集めている。

  

 「徳川埋蔵金」から米国にあるといわれる「宇宙人カプセル」まで、お笑いコンビ・ハローバイバイの関暁夫さん(31)が語る都市伝説をまとめた単行本『ハローバイバイ・関暁夫の都市伝説』(竹書房)は実売で10万部を突破した。昨年末に初版8000部で発売され、増刷を重ねている。

 好きなことを芸に、と関さんがライブで都市伝説を語り始めたのは3年前。客席から笑いは起きず、みんな息を潜めて聞く。「へえ」「はあ」と時々漏れ聞こえる声のみ。女子高生が多かった客層は20〜30代に変わった。「僕はただの語り部。世の中の人が作ってくれた物語が面白い、世間のおかげです」

 テレビ東京系のバラエティー番組「やりすぎコージー」でも、「芸人都市伝説」は人気企画だ。視聴者はやはり20〜34歳の若い世代が中心。番組DVDも3万本とヒットしている。

 同局プロデューサーの伊藤隆行さん(34)は「『生きていても面白くない、その場が楽しければ良い』と刺激を求めている人は多いと思う。都市伝説にひかれるのは現実からの逃避行動かもしれません」と話す。

 「都市伝説」とは、民俗学者の大月隆寛さん(47)らが、ブルンヴァン著『消えるヒッチハイカー』を翻訳した88年に作られた言葉だ。ここでは「わたしたちの時代の希望、おそれ、不安をうつしだす」とある。

 国学院大名誉教授(口承文芸)の野村純一さん(71)は子供のころ、「町の食堂のバケツからネコの首がはみ出していた」と聞かされたという。大学に入れば「食堂のカレーにネコの肉が使われている」となり、最近ではハンバーガーが伝説の対象になる。都市伝説は時代とともに姿を変えてゆく。

 「どれだけ調べても、最初に語り始めた人にはたどり着かない。でも、物語が生まれた理由や背景に近づく手がかりとなる、それらしい資料は見つかる。だから、僕も信じているところはありますよ」

 かつては口承伝達で広がった都市伝説。今は、インターネットに関連サイトがあふれ、メールで広がるエピソードも数え切れない。

 中央大助教授(コミュニケーション論)の松田美佐さん(38)は、メールやブログの登場で「情報の発信者が増え都市伝説のような小話を語る場は増えている」と話す。

 「現実」になった伝説もある。「炭酸飲料ファンタには70年代、ゴールデンアップル味があった」という伝説は、近年ネットを中心に「あるない論争」に発展。実在しなかったのだが、02年と06年に日本コカ・コーラは商品化し、限定発売した。

 松田さんは「電話で伝えるまでもない小話でも、ふと思いついて送ることができて、いつも一緒にいる感じがする。ウワサや都市伝説は『あなたには伝える、教える』という人間関係を確認する意味がある。だから、真偽は問わないのです」と話す。

 ミクシィなど、若い世代が親しむ、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)も都市伝説を語り、広める場にはぴったりなのだ。

 一方で、マスメディアを巡る状況は変化し、報道や情報の正確さ、倫理性が強く求められるようになっている。

 民俗学者の大月さんは、「マスメディアを介した『タテマエ』が濃密になった分、『それ以外』への欲望がふくらみ、ウワサやゴシップの広まる環境は整っている」という。都市伝説は差別につながりかねない言葉遣いや描写、特定の企業にマイナスとなる話があふれている。公の場では紹介しにくいエピソードの方が多いくらい。

 大月さんはこう続ける。

 「メディアが発達して情報がまんべんなく流通するようになれば、『真実』がより確かになるのではなく、『真実』とされるタテマエが増殖し、それに比例して『それ以外』も肥大する。都市伝説的なものが宿りやすくなっている部分はあるのでしょう」

    ◇

・童謡「さっちゃん」には4番の歌詞があり、それを聴いたら……。

・海辺で足を切ると傷口からフジツボの卵が入り込んで体内で繁殖する。

・切符の端にある4ケタの券番の1ケタ目と4ケタ目が同じ数字だと「両思い切符」、持っていると恋がかなう。

・○○公園の池でボートに乗ったカップルは破局する(各地の有名公園で存在)。

・人の顔をした犬、「人面犬」がいる。

(『ハローバイバイ・関暁夫の都市伝説』などから)

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