現在位置 : asahi.com > 文化芸能 > 文化 > 文化一般 > 記事 ここから本文エリア

「かながわ考古学財団」解散へ 「質落ちる」学界が総反発

2007年02月17日

 埋蔵文化財の発掘事業を民間の発掘会社に全面開放する――神奈川県が打ち出した方針に考古学界が揺れている。国や都道府県の公共事業に伴う発掘はこれまで、自治体かその出資する財団が実施してきた。その原則を覆す決定に、考古学者からは「発掘の質が落ちるのでは」と危惧(きぐ)する声もあがっている。

 発端は、05年11月。神奈川県の松沢成文知事が明らかにした県主導の法人削減案の中に、福祉事業法人などと共に県内の発掘調査などを手がける、かながわ考古学財団が入っていた。

 同財団は93年設立された県が100%出資する第三セクター。05年度の事業規模は約17億円で、29人の専任職員が年間数十件の発掘調査をこなす。だが、「2010年以降の雇用は保証できないと通告された」と、ある職員は語る。

 計画では、10年までに、県は財団との出資関係を打ち切る予定で、財団は今後、会社組織やNPOなど、第三セクター以外の法人への変更を目指していくとされる。財団が実施していた普及啓発活動や遺物の保存処理などは今後、県が直接行うという。

 「財団の事業は民間で代替がきき、法人の自立度も高いと判断し、整理の対象になった」と県生涯学習文化財課は説明する。

 だが、考古学界は総反発の構えだ。最大の団体である日本考古学協会は昨年10月、撤回を求める要請書を神奈川県あてに送った。「埋蔵文化財行政は発掘、遺物の管理・保管、その活用・公開の三位一体が基本。そのうち、発掘だけを切り離して、全体のスムーズな運営ができるかどうか」と、同会会長の西谷正・九州大名誉教授はいう。

 反対運動も広がる。昨年7月には、考古学者や市民らでつくる「神奈川の文化財の未来を考える会」が発足。今月初めに開かれた第2回の検討会には、県内外から100人近くが集まった。廃止撤回を求める署名も1万6000人を超す。

 民間組織に発掘を全面委託した場合に生じる最大の問題は、誰がその発掘の質を維持・管理するのか、という点だろう。

 現在、神奈川県に登録する発掘会社は35。しかし、その内容は個人業者から、数十人の調査員を抱えるところまで差が大きい。また、発掘の管理・監督は従来、県の業務だが、財団が解散すれば、発掘レベルのチェック等にかかわる仕事量もかなり増えるものと考えられる。

 発掘調査の実施方法など、文化財保護に関する事柄は地方自治体の取り扱い。このため、監督官庁の文化庁も、やや手をこまねく形となっているが、同庁記念物課の坂井秀弥・主任文化財調査官は「文化庁では、民間組織への委託は本来、緊急避難な措置と位置づけてるんです」と疑問を呈する。神奈川同様の財団は全都道府県の約6割にあり、「このやり方だと、これまでの仕組みが崩壊する。広がり始めたら、影響は計り知れない」とも。

 一方、業者団体・日本文化財保護協会の戸田哲也会長(玉川文化財研究所社長)は、「すでに神奈川では発掘の約半数を民間組織が行っているという実情がある。今や民間と県などの財団の間に調査能力の差はない」と訴える。

 ただし「発掘は代替できても、分布調査や研究調査、試掘など、県レベルでしかできない業務がある。財団組織をそれらの方向で生かしていくやり方もあるのではないか」とも語る。

 神奈川の行方をいま、全国の考古学関係者が注目している。

PR情報



ここから広告です
ここから広告です
広告終わり

マイタウン(地域情報)

∧このページのトップに戻る
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。 Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.