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ヘレニズム文化流入か カンボジアの遺跡

2007年03月30日18時09分

 世界遺産として知られるカンボジアのアンコール遺跡群の周囲には、それに匹敵する数々の大遺跡が点在する。その一つ、ソンボール・プレイ・クック遺跡。昨年、大雨で大きな被害を受けたが、中心部にあった「男性像の浮き彫り」などは無事残っていることが、写真家の大村次郷さんによって確認された。

 同遺跡は、アンコールワットから東南へ百数十キロのコンポントム州にある。カンボジア統一を成し遂げた、真臘(しんろう)クメールのイーシャーナ・バルマン1世によって、7世紀に築造。アンコールワットなど12〜13世紀の建物と異なり、石ではなく、れんがが多く使用されているのが特徴だ。

 1902年、フランスの軍人・ラジョンキエールが初めて紹介した。最近では、上智大学が01〜03年に遺跡の現状などを調査。早稲田大学は修復などを手がけている。

 浮き彫りは高さ30センチ程度。男性の頭部を表現したもので、魔よけなどの役割を担っていたとみられる。遺跡中央付近にあるれんがの塔にはめ込まれていた。

 昨年8月、遺跡周辺を襲った豪雨で塔は崩壊したが、浮き彫りは保護されているのを先頃、大村さんが現地で確認した。「無事でほっとしました」

 アジアを中心に世界各地の遺跡を撮影する大村さんは、同遺跡に対し「ギリシャに端を発したヘレニズム文化の影響らしきものが見て取れるのが興味深い」と新しい見方を示す。

 いわゆる「ヘレニズム文化」は紀元前4世紀、アレクサンダー大王の遠征に伴って東方に広がり、ガンダーラをはじめとする、仏教美術などにも大きな影響を与えたといわれる。

 大村説について、上智大学長の石澤良昭さん(アンコール研究)は、「男性像は彫りが深いし、ビシュヌ神が乗るガルーダの表現は、ギリシャ神話に登場するグリフィンに似ている。図像にヘレニズムと似通ったものはある」と認める。

 「密林の中の都市」と考えられがちなアンコール遺跡群だが、石澤さんによると、その外港といわれるベトナム南部のオケオ遺跡で、インドからもたらされた護符やビーズ玉などが出土するなど、西の文化が流れこんでいたという。

 時代は離れているが、何らかの形で伝えられた可能性はあるのか、東西交渉史に一石を投じる魅力的な仮説。石澤さんは「大村さんの説は鋭い目でファインダーをのぞく写真家ならではのもので、興味深い」と話している。

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