現在位置:asahi.com>文化・芸能>文化>文化一般> 記事 ハードボイルド小説、日本で半世紀 選集など出版2007年04月02日15時29分 日本にハードボイルド小説が根付いて半世紀。先駆けとして活躍した作家高城高(こうじょう・こう)さん(72)の選集『X橋付近』(荒蝦夷(あらえみし))や、翻訳家小鷹信光さん(70)の評論エッセー『私のハードボイルド』(早川書房)が相次いで出版されるなど、日本のハードボイルドの原点をみすえる仕事が増えている。
高城さんは、東北大在学中の55年から15年間に約30の長短編を発表した。新聞記者の仕事が面白くなったために以後小説は書かず、単行本も2冊出しただけだが、江戸川乱歩が「ハードボイルドの思想と文体はアメリカ独特のもので、これを日本に移すのはむつかしいと考えていたが、二十才を越したばかりの若い作家は、ぼつぼつこれをわがものにしはじめている」と、大藪春彦さんとともに名前をあげたこともあった。 高城さんがハードボイルドにひかれたのはアメリカへのあこがれからという。 「僕らは小学校高学年で敗戦を迎え、中学校時代にはかっこいい米軍の兵隊を見て育った。ハメットやチャンドラーなどハードボイルド作家に熱中したのも、暗部も含めて、そこにアメリカの都市生活が描かれていたからです」 表現としてもハードボイルドは、日本の小説にない新しさがあった。「心理描写を省き、会話と行動の描写でつないでいく。簡潔な文体が魅力的でした」 小鷹さんは『私のハードボイルド』で、「この道をトボトボと(まあ、いくらか颯爽(さっそう)としていた頃もあったにせよ)五十年以上も歩んできた」と記して、日本のハードボイルドの歴史を詳細にたどった。 小鷹さんの出発点は西部劇映画だった。「男としての理想の生き方、あるいは理想のヒーロー像を探したいという思いがあり、アメリカの大衆文化にのめり込んでいった」 高校時代には、小説や映画を通して、ハードボイルドの世界に踏み込む。しかし、60〜70年代に「古き(良き)アメリカが、目の前ではげしく揺さぶられ、内側から壊され、変形してゆく」のと同時に、ヒーロー観も変わっていく。「もろさを持った人間を描いたネオ・ハードボイルドと言うべき作品群が出てきて、それを支持しながら、同時に正統派ハードボイルドとは何かを考えるようになった。ハメットの手法や生き方などには、今も学ぶべきものがあります」 「ある世代の日本人ほどハードボイルドという言葉に思い入れを抱く国民はいない。ジャンルとしてのハードボイルドが再び活性化するとは思えませんが、村上春樹さんのチャンドラー新訳も出て、若い世代がどんなふうに読むのか楽しみです」 ◇ 14日午後2時から東京・三田の慶応義塾大で、日本アメリカ文学会東京支部例会として小鷹さんの講演「“ハードボイルド”の文献学」がある。無料で予約不要。問い合わせは大串研究室(03・5427・1196)。また、5月21日に仙台市内で高城さんと作家逢坂剛さんのトークショーが開かれる予定。会場・料金は未定。問い合わせは荒蝦夷(022・298・8455)。 PR情報 |